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[コメント] 狂った野獣(1976/日)

息つく暇なくアクションが展開する中島貞夫の快作だ。本作も京都が舞台。片桐竜次川谷拓三の銀行強盗犯が、路線バスをジャックし、人質となった乗客達と追う警察の人間模様を絡めて描いた群像劇だが、生っちょろい人間ドラマはほとんど描かれず、怒涛のアクションで押し切って見せる。
ゑぎ

 まず、銀行強盗からの逃走場面が手持ちのブレブレ映像で気持ち悪くなってしまったし、その後のチェイスシーン、カーアクションも混沌としており、決してスマートな出来ではないのだが、しかし、この全編力みなぎる演出は大したものだと思う。

 主人公は乗客の一人、渡瀬恒彦で、バスジャックの行方とともに、彼の過去が、謎としてプロットを引っ張る。渡瀬のフラッシュバックでは、テスト走行車が横転するカットが度々挿入されるという、回想場面もアクションシーンなのだ。また、渡瀬には、相棒の黒いツナギの女・星野じゅんがおり、この存在も面白い。彼女は、オートバイで、乗っ取られたバスを追う。これにより、彼女と警察との三つ巴の追跡劇となる。星野じゅんは、エンディングまで絡む良い役だ。

 警察側では、何と云っても白バイ警官の室田日出男が目立っている。途中、バスにしがみついたまゝの状態となり、最後は、高架から落下する。あと、捜査本部で指揮を執る刑事は岩尾正隆。彼だけ関東弁というのはちょっと違和感がある。

 バスジャックの収束のさせ方や、その後の記者会見シーンもよく考えられている。渡瀬と星野のエンディングも、その意味不明さがカッコいい。全体に声高に傑作だと云うレベルの映画ではないが、カルトとしての魅力は十分にある映画だろう。

#その他の配役等を備忘で記す。

 乗客達。女優の卵で、やっと役をもらって急いでいる橘麻紀。犬を連れたオバチャンは荒木雅子。不倫カップルは、男性教師の野口貴史と生徒の母親・三浦徳子。風呂屋へ行く途中だった女は中川三穂子。そしてチンドン屋の志賀勝など。

 ラジオの実況は笑福亭鶴瓶。ちょっとしか出ない。もっと筋に絡む役かと期待していたので、がっかり。中盤で唐突に三上寛のライブシーンが挿入される。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)disjunctive[*] ぽんしゅう[*]

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