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[コメント] マネー・ショート 華麗なる大逆転(2015/米)

この映画はマイケル・ルイスの著作が原作だが、映画は原作に書かれている細部が省略されている。映画を観る前に本を読むのがお勧めだ。経済学が判るほうが勿論理解には良い。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この後アメリカの不動産投資はどうなったかを説明しておこう。モルガン・スタンレーは三菱UFJの出資のおかげで倒産は免れた。アメリカの賭博みたいな投資ブームは復活している。モルガン・スタンレーは利益を出し、株価は回復している。ただ、小手先は変えている。不動産にお金を出す人間が世界の工場の所在地である中国人が中心になった。中国では不動産価格が上がりすぎて住む人がいない廃墟が大量にミスマッチで存在するのは報道の通りだ。よって不動産の値段が下がっている中国から投資が外国に逃げだしている。

カナダのバンクーバー(香港返還時に移民した中国系が多い)では、昔から住んでいる中国系カナダ人に言わせると狂気のように土地が値上がりしたそうだ。

日本もバンクーバー程では無いが、中国人が不動産投資をしている。今、東京は観光客がひたすら増え続けているのはご存じの通りだ。ラブホテルですら普通のホテルに改装されている位だ。日本の地価は相対的に安いと思われれており(それも狂っている話だ)、投資された物件は転売が目的だが、同時に民泊でも稼ぐことが念頭に置かれている。

この資産投資が実業より儲かる事を書いたのがトマ・ピケティだ。普通に働く人は相対的に貧しくなり続けている。オキュパイ・ウォールストリート運動(左派)やトランプ当選(右派)といった政治行動は全てこの賭博資本主義に対する異議申し立てでもある。

日本ではどうも右左の話をして相手方が悪いと言えば気が済むようだが、この経済の話を解決しなければイデオロギーの先鋭化が進むだけだ。トランプ当選はオバマがこの経済問題を解決しなかったからだ。(私はトランプに経済問題が安易に解決出来る等と思っていないが、こないだのアメリカの選挙結果は現状に対する異議申し立てで、その文脈では私は評価するし、トランプやサンダースの言葉が民衆にひっかかるアメリカを魚市場の話ばかりの日本より羨ましくも思う。)

日本でもクルーグマンの考えをネットで広める努力があり、2ちゃんねるやニコニコ動画を本拠地とする人たちがそれを支持し、与党の経済政策の一部を変化させた。でも、殆どの人は判っているだろうが、クルーグマンやスティグリッツやピケティは2ちゃんねる経済学の人たちとは違い、右翼でも保守でも無い。クルーグマンが何故日本の首相と思想が違えども話をするのか、右左問わず良く考えたほうが良い。経済学とイデオロギーを安易に関連付けるのはくだらない。

日本のSNSの流れでは2ちゃんねる経済学のレベルを超えて、クルーグマンやスティグリッツやピケティやケインズを踏まえて、ポリシーミックス(財政出動)をするべきという事が話されている。現状への異議申し立てとして筋が通った話をしようとはしている。私に言わせればそこを反動等と言う人のほうがイデオロギー優先に見える。(まあ、アニメと漫画の表現規制への反対とか過激なフェミニズムに対する反対とか経済と関係無い事柄を絡めてるから反動に見えてしまう部分もある。個人的には別々に考えることだと思うが。)政権交代は給料が少なくなった人が現状への異議申し立てをするために起こす物だと考えている。

(ちなみに過去の日本の与野党逆転も異議申し立てだ。結果は出ていないが、少なくとも再逆転時に金融政策は変わった。不十分だが。)

経済学のいろはが判ってピケティのあんちょこ本が読める程度の知性があれば今の日本の成長率ではより大多数の人が貧乏になっていく事が判るだろう。失業率が下がったと政府は自慢するが質の良い仕事は減り続けている。別に私は与党の経済政策を特に支持している訳では無い。もっと良い経済政策を提示出来れば乗り換える準備がある。

それは公共事業を主体に道路や鉄道等のインフラ整備の財政出動をする政策で、コンクリートから人へでは無い。何故かというとインフラ整備には大恐慌時代に不況を脱した実績があるからだ。(それだけでは無く移動時間が短くなることによる労働者の健康状態の向上や商圏の拡大等も期待できる。終電で帰る人が少しでも睡眠が欲しい事が判れば、なぜ都知事選挙で二階建て電車が必要だと訴えたかが判る。勿論そんな事の実現性は薄いし、ブレーンの専門家がそんなことも吟味出来ないから都知事の仕事が魚市場で揉めることばかりの体たらくなのだろう。)ただ、それは人に投資する事を批判している訳では無く、日本には体や精神がハードワークで壊れた人が相当数いる。その人たちを復活させる方策も行うべきだ。要は両方やるべきだと言っている。

今は経済政策で支持出来る事さえ話せればイデオロギーの立場を超えて話が通る面白い時代でもあると思う。サンダースやブレイディみかこの話をイデオロギーのせいで嫌う人は少なくなっている。それもネット時代で思想が違っても一致部分が見つかれば共感出来る面白さだ。

この議論する機会をどう活かせるかは重要だと考えている。

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