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[コメント] トゥルー・グリット(2010/米)

もしもコーエン兄弟が『レオン』を撮ったら。
きわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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殺し屋のおっさんと家族を殺された少女。「おじさんお願い!私の敵討ちに手を貸して!」「・・・しょ、しょうがねえなあ。」というつかみは鉄板だということひしひしと感じた。フランスだとメロドラマになるけど、アメリカではこんな汗臭くなるんですね。この素材はどこの国でも料理できそう。西部劇は日本の時代劇にまんま変換できるので、これをぜひ日本でもやってほしい。「おじさんお願い!おとっつぁんの敵、あたいに取らせておくれよ!」「・・・し、仕方あるまい。」ほらできそう。小林薫志田未来あたりでどうでしょうね。

それはともかく本編の話ですが、これは間違いなくヘイリー・スタインフェルドの映画です。新人の「ときどき素顔の私がでちゃうの。でもそれもいいでしょ。」みたいな隙が一切ない。主人公マティのごとく、堂々と大の大人と渡り合っている。マティ・ロスというキャラクターもまずものすごく格好いい。14歳であの交渉力はなんなんだろうか。あきらかに臭そうで一筋縄ではいかないおっさん達を前に一歩も引かない。それから彼女は最初から最後まで一滴も涙を流さない。断固とした意思で殺し屋がいる荒野へ向かう。それは子供っぽい無鉄砲さではなく、「代償を払わせる」という確固たる決意の元に、お金で雇ったプロを携えた理性的な行動。まあたしかに無鉄砲ではなくとも無謀ではあるかもしれないけど。特に冒頭の川を渡るシーンはぐっときた。あのシーンが一番好きだ。あと、この手の映画にありがちな「女だ犯そうぜ」っていうシーンもなかったし。あの手の場面は何かと言えばゲロを吐くシーンとともに消していってほしいと思う。別になくても話は進む。残念なのは、音楽が安っぽかったのと、マット・デイモンがなんかジャマだったこと。いや、マット・デイモンは好きなんだけど、この映画にはあの役自体なくても良かったと・・。音楽も台詞もキャラクターもそぎ落としてもっと硬派にして良かったのに。というかそういうのを期待していた。マティの成長した姿もいっそのこといらない。あ、あと馬・・ 馬が・・・ 馬ってなんて健気で可哀そうな動物なんだろう・・・ああ忘れてた。西部劇ってたまにこういうのがあるんだ。動物と子供の映画は嫌いなのに。まさかの「力ずくで泣かすムービー」に変貌してフィニッシュなんて、コーエン兄弟・・(2010/4/20 劇場)

(評価:★4)

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