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[コメント] バリー・リンドン(1975/米)

あの画が観たいの!!
きわ

キューブリック映画の何に魅了されるかというと、筆頭に、神経質なほど計算されたシンメトリーな構図。『シャイニング』や『2001年宇宙の旅』など、完璧すぎて息苦しくなるくらいの幾何学的な画が緊張感を生む。それがなんともいえない快感なのだ。私はこれがクセになって、キューブリック監督の映画ではあの構図と毒々しい原色(特に赤色)を観ると無性にぞくぞくして病み付きになった。

ところがこの映画にはその構図はほとんどない。初めて退屈も感じた。私が今のところ観たキューブリック作品で☆3なのはこれと『ロリータ』だけ。あれにもシンメトリーな画は少なかった。結局兵隊の隊列ぐらいしかない。考えてみれば、田舎の風景で左右対象になってるとこなんてそうそうない。(といいつつ、あるシーンで「よく探したな!」って思うほどお椀みたいな山が映ってて、さすがっていうかびっくりだけど)この監督はやっぱり近未来的とか宇宙とか、人工的な背景で撮るのが一番良いと思う。一番本領発揮するんだと思う。ていうか単に自分が観たいだけだけど。それにしても、中世ヨーロッパから近未来からサイコスリラーから戦争から歴史大河まで、ほんっっとなんでも撮れるんだなあ。ジャンルはバラバラなのに、スタイルは一貫してる。神だ。神。やっぱりこの人大好きだ。

コメディは撮りたいと思ったことあるのかなあ。コメディのセンスもあると思う。だってキモキャラ多いもん、先生の映画。(特にこの映画の税理士だか弁護士だかの白塗りのおっちゃん、『時計じかけのオレンジ』のパパでしょ。あのネットリした感じ。キモイなあ。いい。)

ところでこの監督はもしかしてゲイだったのかなあ。どの映画にもホモセクシュアル的な要素が潜在的に入れられてる気がするのだ。「時計じかけ〜」には特に。主人公がゲイの作品は無い気がするのだけど、不思議だ。もしかするとそれも、作品の全てに共通する「緊張感」の元なのかもしれない。 そう感じるもう一つの要因は、女性の描き方が冷たい、という点。この作品からは特に感じる。クレジットは主役のライアン・オニールマリサ・ベレンソンと、二人が主役のように入ってる割りに、奥さん役のマリサ・ベレンソンの撮り方の突き放し様といったらない。ほんとこの監督は女に興味がないんじゃないかというほど、「美しいだけの金持ちの妻」という目線で描かれた彼女は、正気を失う前であろうとなかろうと蝋人形のようにずっと生気がなく、とことん突き放されて映っている。「時計じかけ〜」に至っては女なんか出てこないんだもん。(その代わりおばさんにはどれも力はいってるんだよね。「ロリータ」にせよ。・・もしかして熟女好き??)

余談ですが、背景に面白い発見をしました。結婚式のシーンで、参列者の中に面白いエキストラが。正確にはエキストラではなくて「絵」。たぶん、『ダイ・ハード2』の空港のシーンにも使われてる、だまし絵のような背景(今調べたら「マットペイント」と言うそうです)で描かれた人間達が、教会の二階席にずらっといた。今だったらこの辺はCGになっちゃうんだろうけど、こういうのを観ると、CGを観るより何倍も何十倍も感動する。CGはすごいのは分かるんだけどしらけるんだよ。どんなにすごくてもCGはCGって見たらすぐ分かっちゃうもん。あの迫力は一度観たらもう終わり。こういう絵とか本物の人間には、人の手で創ったっていう温度がある。(CGも人の手だろうけど)私は「スター・ウォーズエピソード〜」よりも『風と共に去りぬ』の方が何回観ても感動する自信がある。いや、する。(08/3/20 DVD)

(評価:★3)

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