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[コメント] アビエイター(2004/米=日=独)

男は親の莫大なる遺産によって、とてつもなく大きな夢を実現するチャンスを手にした。夢や野心を持ちながら日常生活の中でもがき続ける平凡な人々が最も欲しがるチャンスを、あっさりと手にした。しかしそこからが本当の戦いであることを、この映画は三時間に渡ってたっぷりと見せつけてくれる。
JKF

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







飛行機を愛し、自ら操縦席に座って誰よりも速く飛ぶことを願った彼は、飛行機に乗りながら果たして何を思い、何を見ていたのだろうか。

ヒューズは飛行機に乗っていたとき、自分が世界の全てであり、頂点だと思っていたに違いない。レオナルド・ディカプリオが『ギャング・オブ・ニューヨーク』と『アビエイター』に出演する以前の、いわゆる「レオ様時代」に出演した『タイタニック』でのディカプリオのセリフを借りれば、「I'm a king of the world!!」って感じだっただろう。しかし決して飛行機を愛してはいなくとも、富と権力を持った人間が制空権を握ることもあった。ヒューズはそんな奴らと戦った。自分の飛行機を飛ばせるために。より速く。より高く。

ヒューズの夢は「スゴイ飛行機」を作り、それに自らが乗って飛ばせることであって、ひたすらそのために全てを賭けた。そしてその代償はとてつもなく大きく、バイキンみてぇな奴らの反感を買うことになり、彼自身の精神をも脅かした。

映画や飛行機と言った産業は当時(今も?)、日進月歩の技術であり、あらゆる技術の到達点は、またすぐに過去の物となってしまう。だからこそ、一つの夢を実現させたら、また新たな夢が待っている。「もっと速く、もっと高く、もっとデカく、もっともっとスゲェ飛行機を!!!」未来への道を己で切り拓け!

本当に好きなモノに対する夢と情熱は永遠に尽きることがなく、それが胸に生きる限り人間は変わらぬままだ。オタクの血は争えない。『アビエイター』は毎回新作を作るたびに、観客にソッポ向かれ、アカデミー賞を逃し、批評家に「『タクシードライバー』の焼き直しみた〜い」などと言われながらも、決して変わらない精神が息づく映画を撮り続け、技巧と己の魂の限りを尽くすスコセッシそのものだ。女にだらしなかったり、精神的に脆かったりするような、人間的に壊れた部分も含めてね。それにしてもスコセッシの映画で、この作品の飛行シーンほどに高揚感を抱くシーンなんて、後にも先にも無いような気がする・・・

ハワード・ヒューズは全く知らない人物だったが、見事にスコセッシ映画らしい魅力ある主人公として描かれていた。『タクシードライバー』『レイジング・ブル』『グッドフェローズ』が大好きな俺としては、その時点で★5決定。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ナム太郎[*] Myurakz[*] Keita[*]

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