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[コメント] ラストエンペラー(1987/英=中国=伊)

溥儀はヒーローではない。だのになぜ、こんなにも彼の人生に感動してしまうのだろう? 
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 激変の時代に翻弄され紫禁城の中で束縛され続けた幼少期、侵略国家にそそのかされ名目だけ皇帝に返り咲いた青年期、元皇帝にも関わらず売国奴として犯罪者生活を送った中年期、ひっそりと寂しげな余生を送った晩年。時代という名の荒波にもまれ続けた彼の人生は、栄光とは全く無縁の悲哀に満ちたものだった。

 しかし私は、そんな溥儀の人生に、私は何故かすっかり感動してしまった。その理由は良く分からないが、おそらく、色んな人間に騙され、利用されながらも、彼は祖国(満州国)に対する愛を決して捨てず、(彼なりに)一生懸命生き抜いたからではないかと思う。

 実際、溥儀は、その人の良さから、本当に何度も人に利用されたらしい。しかし、彼は人を陥れたり、他国の侵略を計画したりということは全くしなかったそうだ(もともと、おぼっちゃんなので、そんなことは考える必要も無かったのかもしれないが)。それでいて、彼の祖国に対する愛は異常とも思えるほど強かったらしい。あの中国激変の時代に、満州に対する愛国心を持ち続けて行動し、しかも殺されずに生き抜いたことは、今考えれば奇跡とも思える。結果的に満州国が復興することは無かったが、ラストシーンの溥儀の表情を観ていると、今でも天国にいる彼は栄華を極めた満州国の復興を願っているような気にさえなった。

 この映画を観て、私は溥儀の人生の哀しい一面よりも、彼の弛まぬ祖国愛に深く感動し、憧れと尊敬の念を抱いた。それを思うと、やっぱり、溥儀は満州人にとってはヒーローだったのかもしれない。

 最後にベルナルド・ベルトルッチ監督へ。やはり、言葉が重要な文化の1つだということに気付かなかったのは、この映画の最大の欠点だと思う。それさえなければ、満点の出来だった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)terracotta お珠虫 Ribot[*] m

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