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[コメント] スコルピオンの恋まじない(2001/米=独)

ウディ・アレンヘレン・ハントのカップルは誰が見ても不釣合いだが、ウディが創り出す世界が好きだからそれも許せてしまう。重たい表現は一切無しで、笑いもシンプル。ラストにはホッとする仕掛けが用意されていたりして、微笑ましい作品だった。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 『アニー・ホール』のイメージが強いため、ウディ・アレンの映画はどうしてもひねくれた観方をしてしまいがちだ。しかし、70歳を目前にしてようやく肩の力が抜けたのか、コメディ路線に戻った最近の彼の作品は非常にシンプルで、余計なことを考えず自然に楽しめる。『インテリア』や『重罪と軽罪』といった重たい作品だけを観て、彼の作品が苦手だと思っている人には、是非本作を観てもらいたい。比較的単純なプロットと繊細な感情表現、そして彼らしい(時折ブラックな)笑いが散りばめられているので、絶対に楽しめるはずだと思う。

 脇を固めるヘレン・ハントシャーリズ・セロンダン・エイクロイドといった共演陣の好演も光っていた。ウディ・アレンとヘレン・ハントのカップルは誰が見ても不釣合いなのだが、罵詈雑言を浴びせ合う二人の息は夫婦漫才のようにピッタリで、なんだか微笑ましささえ感じてしまった。個人的に、一番笑えたのは、「ヒトラーよりもお前が嫌いだ」、「ムッソリーニよりも嫌いだ」というアレンの台詞で、これには爆笑だった(もちろん、彼がユダヤ系だから笑えるわけです。何とも自虐的なギャグだ。)。シャーリズ・セロンに誘惑されるシーンも、普通ならどうみても有り得ない展開だと思うところだが、羨ましいやら可笑しいやらで、現実味の無さは笑いで吹き飛ばしてしまう。ただ、唯一残念だったのは、ダン・エイクロイドの登場が控え目だったこと。独特な動きや表情で笑わしてくれる彼の活躍をとても期待していたのだが、御大アレン先生の前では、殆どギャグは無し。一歩引いた感じで、本当に脇を固めるという感じの役回りでした。

 本作は2002年のクリスマス映画の中では最高の1本だった。ウディ・アレン大先生には、こういう純粋なコメディをいつまでも作り続けて欲しいものだ。彼と彼の映画の未来に、「マダガスカル!」

<< どーでもいい余談 >>

 本作は公開前から楽しみにしていたので、珍しく初日に恵比寿ガーデンシネマに見に行きました。クリスマスシーズンなので、昼間は混むことを予想して、19:00過ぎの上映回を狙って家を出たのですが、19:00前にガーデンシネマに着いてビックリ! 冷たい雨が降る中、入り口に大きな人だかりができていたのです。

 「やばっ、立ち見かも?」

 と急いで人だかりに近づいて行くと、その人達は皆レインコートを着て、帽子を被り、バインダーを小脇に抱えています。「不思議な光景だなぁ」と首をかしげ、彼女達の帽子を見てみると、そこには「ぴあ」のロゴが!

 そうです。その集団は、映画の感想を出口調査するぴあの特派員だったのです。1人1人にアンケート用紙を配り丁寧に感想を集めている彼女達を横目に、チケット売場へと向かう私は、“映画を見終わった後、どんな見事なコメントを書いてやろうか? シネスケの経験を生かして、あわよくば、ぴあにコメントを載せてやろう!”ということで頭がいっぱいでした。

 そんなわけで、上のコメントには、“自然に楽しめた”と書きましたが、実は上映中は雑念だらけ。暇さえあれば、どんなコメントを書くかばかり考えていました。ところが、特派員達は私が映画館に入った直後の19:00過ぎには取材を済ませ、とっとと帰途についていたのです。

 そんなことは露知らず、上映終了後、コメントを考えながら、颯爽と出口へ向かう馬鹿な私。当然ながら、出口には人っ子1人いませんでした。冷たい雨が降る中、電飾で彩られたクリスマスツリーに向かって、「ぴあのバカヤロー。俺の力作コメントどうしてくれるーーー!」と叫んだことは言うまでもありません(大して気の利いたコメントも思い浮かばなかったのですが・・・)。

 というわけで、私の的外れなコメントをいつでも快く迎えてくれるCinemascape万歳です!!! 以上、どーでもいい余談でした。

(評価:★4)

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