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[コメント] 国士無双(1986/日)

飄々とした偽者云々というよりも、肝心の大立ち回りを省いてしまっては中井貴一がただの馬鹿にしか見えない。だからいくら文楽人形とか歌舞伎とかもってきたりしても、ごまかしているだけにしか見えず、全然爽快感がない。
シーチキン

元の1932年製作の「国士無双」は伊丹万作監督の最高傑作とも言われたらしいが、現存するフィルムは10〜20分しかないらしい。それを脚本を頼りにリメイクしたらしいが保坂延彦監督はその残されたわずかな時間のフィルムを見てないんじゃないかとまで思えてしまう。

DVDには特典映像として、1932年製作の『国士無双』が10分くらいだが収録されていた。そちらでは片岡千恵蔵演じる偽者が、本物の伊勢守を相手に、殺陣というよりも大立ち回りをきちんと演じて、立派に本物を動きでやり込めている。

このシーンをきちんと見せてこそ、主役の魅力が大いに引き立てられると思うのだが、このリメイク版ではそのシーンがあまりにずさんになっている。

だからいくらこの後、中井貴一が見知らぬ娘を助けたりヤクザの出入りをおさめたりしても、あまりにご都合主義的な展開に白けるだけになってしまう。

オリジナルは未見なのでよくわからないが、おそらくオリジナルの魅力をもっとも正しく受け継ぎ発揮しているのは、岡本信人火野正平の、とぼけた味を出しながらもそれなりにしたたかでもあったコンビではなかったか。だから彼らの出番が終わると同時に急速に色褪せてしまった。

せっかくのフランキー堺笠智衆というベテランの味わいも台無しで、そこまでしてまで中井貴一を前面に出しても、その彼に全然華がないからどうしようもない。

ただ、原田美枝子の可愛らしさだけは見るべきものがあり、本作の後半ではほとんど唯一といってよい魅力であった。

(評価:★2)

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