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[コメント] THE 有頂天ホテル(2005/日)

「周りがなんと言っても自分のやりたいことをやればいい」というもっともらしいメッセージのもとで、もろもろの向上心、現状変革のための努力を投げ捨てる、完全な現状肯定という実に志の低い映画になっている。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







大晦日のホテルを舞台に、カウントダウンパーティーやら疑惑の渦中の代議士やら受賞パーティーやら、愛人、元妻、夢破れて故郷に帰る若者やら、盛りだくさんの登場人物を巧みにさばき、伏線の張り方や小ネタの使い方の上手さなど、洗練されたテクニックを感じさせる。

疑惑の渦中の代議士が、夢破れた青年の歌や元愛人の言葉にくるくる態度を変える様はこっけいを通り越してあきれ果てるが、その無様な様まであっさり肯定されているのには幻滅。

だが、最もがっかりさせられたのは、クライマックスとなるカウントダウンパーティーの出だしを飾ったYOUの歌のお粗末さである。本来、この映画の流れの中でも、トリに位置付けられるシーンだと思うが、そのシーンにぜんぜん似合わない、へたくそな歌だった。

「歌いたいんだから歌わせてやりたい」と仲間の芸人のやさしい気遣いは、それはそれで良い話だが、果たして彼女の歌が、そういう山場となるパーティーのオープニングを飾るにふさわしい実力を備えた歌なのか?

自らの歌を、人の心を打つものへと昇華させる努力にはなんら関心を払わず、歌いたいんだから歌わせてやればいいじゃない、と安易な同情で歌わせてもらって、嬉々としている、その志の低さは映画全体のテンションを最後になってどん底に落としてくれた。

この映画の中にはもっと芸達者な役者、例えば西田敏行とかもいるのだから、せめてそういう役者を配するべきではなかったか。2時間半という時間の長さを感じさせなかったし、そこそこ笑えたのだから、悪い映画ではないし、見ただけの価値はあったが、しかし、それだけのものでしかない映画であったことも間違いない。

(評価:★3)

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