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[コメント] フォーリング・ダウン(1993/米=仏)

マイケル・ダグラスも歩けば、マシンガンを拾う、ってか。Reviewは、この映画に見る国際経済学について。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭、真夏の蒸し暑い日、ハイウエイは大渋滞で車のエアコンは壊れ、ついにはエンスト。マイケル・ダグラスはイライラしながら、歩いて公衆電話を探す。やっと見つけたと思ったら、今度は小銭がない。近くの雑貨屋で両替してくれと言うと、「何か買え」と言われる。「くそっ」と思いながらもコーラを買おうとすると、「1ドルだ」といわれる。

これがのちのちキレ続くマイケル・ダグラスが、ブチ切れた出発点である。ところでこの時マイケル・ダグラスが手にしたコーラは日米の規格の違いはあるだろうが、手にした大きさから判断するに、おそらく350mlくらいである。

ところでこの映画が製作された1993年は、急激な円高が進行し、1ドル110円を突破し、100円を割り込むのも時間の問題、といわれた時期である。そしてこの時、日本では、自動販売機などでは、350mlの缶コーラは110円で売られている。

だからこの円ドルレートで換算すると、マイケル・ダグラスがおそらく350mlのコーラに、100円ちょっとを請求されて、なぜあんなに怒らなければならなないのか、疑問が残る。日本の感覚では、ホンのちょっと安いじゃないか、という値段だからだ。

ところがいわゆる円ドル相場は、投機市場となっていて、実際の通貨価値での比較を反映しない事が多い。実際の通貨価値を比較するには、「消費者物価ベース購買力平価」というレートでみることが必要である。

これはひらたくいえば、日米で、例えばそれぞれ100円で何が買えるか、あるいは、日米で同じ物がそれぞれいくらの値段になっているか、で比較するから、庶民の経済感覚に近いレートである。

そしてこの「消費者物価ベース購買力平価」での円ドルレートは、1993年当時には1ドルおよそ200円である。

だからマイケル・ダグラスは、あの状況で普通110円の缶ジュースに、200円払えと、山奥のしなびた旅館とか、どこぞの映画館内料金よりも高い値段を吹っかけられたのである。

まあ、だらからといってマイケル・ダグラスの肩を持つわけではないが、これでは彼がブチ切れるのも、無理はないわなあ。。。。

オマケ1★★★ところでこの冒頭の200円を吹っかけた雑貨屋の主人が、韓国人という設定だったから、アメリカでは公開当初、韓国人を中傷している、と批判されたそうだ。

オマケ2★★★しかしこの映画、携帯電話が普及した現在では起こり得ないような話ではないだろうか?マイケル・ダグラスが携帯電話を持っていれば、最初の店での話はなかっただろうからなあ。そう考えると、携帯電話は、実生活だけでなく、映画の世界も変えているのかもしれない。

(評価:★3)

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