コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] シッコ(2007/米)

いささか説明調のところはあったが、現実をひたすら直視していくことによって、見えてくるものがある、ということを実感する。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「医療」ではなく「保険」がビジネスという体裁をとりつつも、これはどう見ても「医療」がビジネスでしかない実態。極端かもしれないが、その論理を突き詰めれば、ビジネスとしてどこが間違っていると開き直っているかのような実態がある。

ムーア監督はカナダ、イギリス、フランス、キューバにも取材に入り、それらの国々では医療費が基本的に無料である事実を大げさに示している。

その対比において、医療費を払えない患者をタクシーでホームレスセンターの前に送り届け放置するアメリカの病院の実態は一体なんなのかと思わざるをえない。

しかし、これは本当にアメリカだけの話だろうか。「国民皆保険」制度の日本はどうなのだろうかとかえりみざる得ない。

声高に叫ばれる医療費抑制と保険料負担引き上げ、自己責任による健康維持とそのための民間医療保険加入の大宣伝、さらに生活保護を打ち切られたり受けることなく餓死者が出るという現実の事件。

医療とはビジネスではなく、人として生きるために不可欠なものであり、そうしていくのが政府の仕事であり政治ではないのか。

9.11の救命ボランティアがその時に負った障害に苦しんでいる現実と、それがアメリカの仮想敵国・キューバの医療によっていくらかでも救われる、といういささかあざとさを感じる演出ではあるが、あえてそういうことをしてまでも、これでいいのかい?というムーア監督の問いかけがはっきりと聞こえてくるような映画だった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)死ぬまでシネマ[*] Keita[*] 甘崎庵[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。