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[コメント] 花のあと(2010/日)

丁寧につくられた事が伝わってくる、美しさに気を配ったロケや撮影、美術は好感がもてる。それらは落ち着いた雰囲気をかもし出し時代劇としての風格を本作に与えている。ただ、今一歩、光るものがほしかったのも事実。
シーチキン

若干の脚色はあるものの、ほぼ原作に忠実な脚本と、その原作の意図を美しい桜にこだわってまとめた物語は、原作通りで物足りない気もするが悪くない。武家の、次男坊以下の部屋住みに生まれた者の胸中をさりげなく取り入れているのも工夫が感じられた。

それに丁寧な美術もよいし、所作にしてもできるだけ上級武士の家中の雰囲気にこだわった格式ばった演出は、作り手の誠実さを感じさせる。ただ、その本格的な所作は主役の北川景子にはちょっとつらかったか、ぎこちなさを感じさせた。

それに比べれば市川亀治郎はさすがに歌舞伎役者だけあって、堂に入った所作で自然な感じがしたが、主役にぎこちなさが残って悪役が自然な演技、ではちとつらいか。

殺陣については、最初の北川景子と孫四郎の、竹刀での立ち合いはちょっとオーバーアクション気味かなとも思ったが、それなりに緊張感があって良かった。後半の大立ち回りは、まあ言ってみればチャンバラだが、市川亀治郎が全体を支えていて悪くない出来。

北川景子は、前髪を上げた着物姿と前髪をおろした稽古着姿ではずい分と印象が違う。はっきり言って稽古着姿の方が段違いの美しさがあった。ただ、原作では以登はそうたいした美人ではないように書かれているから、原作に忠実な配役と言えるかもしれない。

全体として、悪くない映画で役者もみなそれぞれにがんばっているのが伝わってくるのだが、ロケによる美しい風景をのぞくと「おおっ」とうならせるだけのものがないのが、いささか残念であった。

また舞台が藤沢周平の時代劇小説ではおなじみの東北の小藩・海坂藩(山形県庄内地方や鶴岡市を想定)としているのに、方言が一切なかったのが気になった。ようは、そういう方言までこなせる役者がいない、ということなのだろうが、その辺がちょっと寂しい。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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