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[コメント] 第9地区(2009/米=ニュージーランド)

寓意と示唆に富んだ傑作SF。『2001年宇宙の旅』が「映像」ならば、「物語」は本作、と言ってよいと思う。「21世紀のSF映画の金字塔」と言ってもよいのではないか。その始まりから結末にいたるまで、思考をとことん刺激された。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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つい最近までアパルトヘイト政策を採用していた南アフリカを舞台に、巨大宇宙船という想像を超える先進技術をもちながら、栄養失調によってくたばる寸前。救出してやった後はスラムをつくり、猫缶欲しさにゴミ漁りと、『E.T.』も真っ青な宇宙人像がまず凄い。

まるで「未開人」のごとき彼らよりも野蛮で強欲なのはいったい誰か?という展開も面白かったし、何よりも終盤の派手なアクションシーンも見応えがあってよかった。

ストーリー上の「穴」はいくつかあるが、そういう瑣末なことを一切気にならなくするのがラストだ。

何故、彼は助かったのか?助けられたのか?だとしたらいったい何故?宇宙人は本当に3年後に帰ってくるのか?帰ってくるとしたらどういう形で、そして何をしに帰ってくるのか?こういう空想を大いに広げ縦横に考え楽しむことができるということは、本作がSF映画として成功していることの証拠の一つである。

これ以外にも本作は、技術とはいったい何か?先進的テクノロジーとはいったいなんなのか、ということについてもちょっと考えさせられる。

巨大な観光船なり遊覧船なりで旅行している我々が、不慮の事故で難破し絶海の孤島に漂着し外界との連絡手段が絶たれ、未開の島で生きていかなければならないとしたら、この映画に出てくる宇宙人といったいどれだけ違うだろうか。あるいは映画よろしくタイムマシンではるか過去にさかのぼった普通の人が、いったいどれだけ技術的な優位さを保てるだろうか。なんてことまで考えてしまった。

見て楽しめて、考えて楽しめる、これぞSF映画だ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ジェリー[*] 代参の男[*] セント[*] kazya-f[*]

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