[コメント] 小川の辺(2011/日)
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美術も良いし、ロケを多用した美しい風景も心を和ませる。それに何よりメリハリの利いた照明が良い。屋内のシーンの自然な暗さが、屋外での、明るい日差しのもとでの殺陣をひきたてる。こられが一体となって、一流時代劇の風格がただよう佳作。
そして東山紀之にはその時代劇にふさわしい役者になったと思わせるだけの完成度があった。
正直言って、前半に出てきた御前試合での木剣による殺陣のシーンは、緊張感もスピード感もなくて二人で合わせた棒振り踊りみたいに見えて、「うわー。これは本番の殺陣も心配だなあ」と思った。それが東山が林の中で、木の枝で素振りを見せるシーンでやや持ち直した感じになり、本番の斬りあいはすばらしい緊張感があった。
さらにその後の菊地凛子との殺陣も良かった。菊地の殺陣は、いかにも女子どもの剣術らしく大振りと小ざかしい小手先の技が目立つが、それを格の違いを見せつけるようにさばいてみせたのは立派。
難を言えば、文庫でも36頁という短い原作に、いくつか付け足した分だけやや間延びをした観があることと、子役が今ひとつ、特に朔之助の子役は大根に近いことか。ただ、山西惇の体さばきなど健闘が光る仇討ちのシーンは良くできていたとは思う。
そういう点はあっても原作の風味を損なうことなく丁寧にとり上げ、さすがは『山桜』の篠原哲雄監督、東山紀之主演と安心させる。
東山紀之はこれでもう本格的な時代劇役者として立派に通用すると思う。かつての三船敏郎のような荒々しさみたいなのはないから、ちょっと役柄を選ばないといけないかもしれないが、まちがいなくこれからの時代劇を背負って立つ役者だと思う。
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