[コメント] この世界の片隅に(2016/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
映画ファンである友人がかつて「映画の感想を言葉にしないといけないんですか。芸術はそういうものではないと思う。」と話していたが、本作を見てその意味が何となく分かった気がする。
微にいり細にいりとことん貫かれた時代考証と方言、そしてアニメだからこその多彩な表現もあるだろうが、本作の言いたいことは、まさに身体全体を包むような悲しみによって伝わってきたと思う。
それだけで十分だとも思うが、それでもなお、市井の人々の暮らしが壊れる、まさに狂った世界への怒りと恐怖はぬぐいきれない。
以下は見終わって数日たってからようやく感じたこと、考えたことがまとまってきて書くことができて、少し追加したものもある。
ただ、本作はこのような悲しみだけを描いた映画ではないと思えるのがすごいところだ。悲しみとともに怒りもあれば、破局に向かう中で生きていかなければならない人々のたくましさ、図太さもあれば、日々の暮らしの中の生きる喜び、楽しさ、そういってよければ幸せ、ささやかな希望もある。しかし一抹の悲劇への予感もある。
まさにありとあらゆるものが詰まった映画だ。そう思うと、本作のテーマソングに「悲しくてやりきれない」をもってきたことは慧眼と言える。本当に悲しみしかない状態だったら、こんな唄は歌えないのではないか。
深い悲しみがあるが、同時にそこから抜け出せる何か、或いはかすかではあっても希望があるからこそ、人はこの歌を歌うことができる。深い、深い悲しみのある本作だが、本作にあるのは悲しみだけではない、そのことを示しているのが、このテーマソングではないだろうか。
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