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[コメント] キングスマン:ゴールデン・サークル(2017/英)

この手の映画として普通に楽しめはする。それにマーク・ストロングにはぐっとくるものがあった。だが、冷静に振り返って考えてみると本作には道義的に問題があると私には思えるのだ。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







その一つ目は、本作での麻薬についての扱い、描き方である。流石にどっかの大統領のように数億人とされた麻薬使用者なんぞは見殺しにしたら良いと極端な事は思わないし、麻薬使用者を助けるためにヒーローが大活躍するのが悪いとも思わない。

しかし、しかしである。この映画では麻薬使用者が「正義の組織」にもいるし、政府の中枢にもいるし、王室にもいるなど、そこら中にごく普通にいる。劇中で女役人が「病気などでやむなく使用する人もいる」というようなことも言ってた。確かに現実の世の中には医療用麻薬を必要とする人もいるのだが、この映画にはそういう人は出てこなかった。

その上、麻薬よりも砂糖の方が危険だとか、酒やタバコも人を殺しているのに(ついでに銃も入れたら本気さを感じるのだが)、それらは合法なのになんで麻薬だけ違法なのかと、女ボスジュリアン・ムーアに言わせている。そしてその悪の女ボスの要求は、麻薬を合法にしてきちんと規制すればよい、というものであった。

これって、意図的なのだろうし、見ようによっては、麻薬はもうごくありふれたもので、誰でも手に入るし、変に禁止して麻薬戦争みたいな事をするよりも、合法化して免許制とかにして規制の対象にしたほうがいいよ、1日20時間も働いている人にはけっこう必要なものでもあるのだから、使い方を間違わないようにしておけばいいよ、と言っているように思えたのだ。

私の考えすぎなのかもしれないが、さすがにどうなのと、思ってしまった。

もう一つは、コリン・ファースの復活についてである。「ありえない」とか「そんな無茶な」とか「やりすぎ」「ご都合主義」みたいなことを言っているのではない。映画なんだから、やり方についていろいろあっても、死んだはずの人間が再登場して活躍するというのは、ありだ。

だが彼は前作でなぜ命を落とすようなことになったのか。本作では直接、撃たれるシーンから描いているが、問題はその前に彼は何をしていたのか、ではないかと思うのだ。

いくら悪役の術中にはまり理性を一時的に失わされたとは言え、彼はその優れた装備と技術と肉体で、やばそうな教団だったとは言え数十人の規模の素人衆を虐殺してしまったのではなかったのか。

だから彼はその惨劇の場となった教会を出て我に返って(凶暴性は消えていたのだ)、己のしでかした事に茫然自失の態に陥っていたからこそ、悪の親玉に銃を向けられても抵抗することもなくあっさり撃たれたのではなかったのか。

私にはそのシーンはそう見えた。凄腕でいかなるときも沈着冷静なスパイだった彼が、無辜の人々を殺しまくった、深く衝撃的な悔悟の念にとらわれて、なす術もなく命を失ったように見えた。だからあのシーンは私にとって前作でも最も印象に残ったシーンの一つだった。

ところが本作では、なぜ撃たれたのかを完全にすっ飛ばしている。記憶喪失という設定もいいが、記憶を取り戻してもその部分はなかったようになっているのだ。

あえて言うが、もし彼をどうしても復活させる、再登場させるのであれば、あの虐殺についての何らかの落とし前をつけるべきだし、それがこの映画の雰囲気にあわないというのであれば、彼は復活させるべきではなかったと思うのだ。

この二つのことがあるから、私は本作には道義的な問題があると思えるのだ。

(評価:★3)

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