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[コメント] 家(うち)へ帰ろう(2017/スペイン=アルゼンチン)

久々に涙が出た、泣いてしまった。「袖振りあうも多生の縁」を地でいくような心あたたまるロードムービーでもあるのだが、その誠実な姿勢が心を震わせた。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







登場人物がいずれも、特に冒頭に出てくる写真を嫌う孫娘をはじめとして、いずれも魅力的だ。主人公の爺さんもしたたかで、食えない爺さんだが、それが旅の中で変わっていく、月並みではあるのだが、これだけでも観る価値がある。

最初に涙が出たのは、老主人公がドイツのホームに足をおろしたシーンだ。ドイツもポーランドも口に出したくない、それほど思い出すのも辛い過去を絞り出したように語り、語られた方もそれを逃げずに受け止める、その誠実な姿勢に、過去に真摯に向き合ってこそ、互いに新しい一歩が踏み出せる、それは齢90になろうかという人間であってもそうなのだと、しみじみと感じいった。

それに作劇もうまい。さんざん、道中のうたた寝の夢で過去の思い出を語っていただけに、窓から見えた仕立屋は「主人公の父親の在りし日の姿が見えているのか」と思ってしまった。それだけに最後の感動もひとしおだった。

ところでマドリードで、仲違いしていた末娘との邂逅のシーンでは「おおっ、ここからリヤ王へ話を持っていくのか?」と思ってしまったが、そんな方向にはならなかったのは良かった。解説を見ていると、チラッとだけ写った末娘の腕の刺青は、収容所へ入れられたユダヤ人であることを示す番号の刺青を父の思いを受け継ぐものとして入れたものとあった。

「そうか」と思う。見ていて私はてっきり仲違いの原因となった五文字の言葉(ありがとう、かな?)を入れたのかと思ったよ。

(評価:★5)

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