コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男(2018/韓国)

時の政権の思惑に惨めに振り回される秘密工作員の、確固たる信念にもとづく行動が、最後の最後に深い感動を呼ぶ。所謂「スパイ映画」の新境地を切り開いたといっても良いと思う。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







流石は米ソ冷戦時代から今日まで、時に東西対決と冷戦、そして雪解け、南北対立、融和、民族統一という激動の歴史の最前線にある国がつくるスパイものは迫真さが違うというべきだろうか。

スパイ=秘密工作員である彼らはなぜ命懸けで任務を遂行するのか。とりわけ「将軍様」に面会するまでのシーンの緊張感はただ事ではない。たとえここで命を落とすことになっても、という覚悟と決意がみなぎった、素晴らしいシーンだった。

そういうシーンが随所にある。さらに信念を持って生き、行動しているのは南にも北にもいることをしっかりと描いたからこそ、ラストシーンでは涙が出そうになった。

一方でスパイものの非情さをリアルに描き、他方でそのスパイたちが何故に、その非情な世界で命を懸けて行動するのか、そこまで踏み込んで従来のスパイ映画の水準を大きく超える傑作と言ってもいいと思う。

劇中、「浩然の気」という言葉が「将軍様」はじめ北の人間から発せられた。気になって調べたところ「浩然の気(こうぜんのき)」とは元は儒教、孟子の言葉が由来で、公明正大で恥じることのない精神、何ごとにも屈しない道徳的な勇気、活力という意味らしい。本作に即して言えば、互いの信念にもとづく行動とその信念に敬意を払った言葉であろうか。

あと余談だが、北の嫌な感じの情報将校の部下のえらく美人の部下は、本当にきれいだった。いっそのこと、北のモデルというのが彼女だったら、それはそれでまた私はえらく嬉しい事であった。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)寒山拾得[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。