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[コメント] 一度も撃ってません(2019/日)

古くて懐かしい昭和の香りが全編に漂うのは、その手の雰囲気が好きな人(私とか)には嬉しい。コメディというより哀愁感の強い喜劇で、笑って楽しむような映画ではないが、遊び心満載であることだけは良くわかる。ただそれがやや、身内受けっぽいのが難点。
シーチキン

かつて故原田芳雄の家で、岸部一徳石橋蓮司桃井かおり大楠道代らが集まった時に、石橋蓮司主演で映画を撮ろうと盛り上がったことが企画の発端だったとか。

言われてみればそういう遊び心から始まった映画に、気心の知れた仲間が集まって、真面目に遊んだ芝居だという感じはする。

シリアスなのかコメディなのかは判然としないまま、人生の黄昏時に、騒いであがいて何とかしようという映画、とはちょっと違うかなと思うし、遊び心の映画と思えば妻夫木聡の中途半端さは納得できるし、意外に好演だった江口洋介とか、豊川悦司のずっこけぶりも悪くない。

ところで主演の石橋蓮司について、1990年にリメイクされた『浪人街』で原田芳雄勝新太郎と並んで、主要な浪人役として見事な殺陣を見せていた。で、以前に1987年の大河ドラマ「独眼竜政宗」を見ていて気がついたのが、彼はこの大河ドラマで後半に徳川家康、秀忠の懐刀となる柳生但馬守宗矩の役を演じていた。

懐刀としては特にどうということのない印象なのだが、彼はこの大河ドラマの中でひときわ光る殺陣を見せている。それは主役の渡辺謙が演じる伊達政宗を相手にした「真剣白羽取り」である。この時、渡辺謙の方はどうもスタントマンの代役っぽいのだが、石橋蓮司は本人が演じたように見えた。

なかなかたいした殺陣を見せて思わず唸ったことを覚えている。本作のような昭和が香る古いハードボイルド風もいいけれど、彼の見事な殺陣を披露する映画も撮ってほしいものである。

(評価:★4)

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