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[コメント] 御用金(1969/日)

特に家老・六郷帯刀を演じる丹波哲郎がよい。仲代達矢も捨てがたいが、武士としての己の本分を、たとえどういう形であれ、全うしようという覚悟がほとばしり、凄みと迫力、やるせない悲しみと、そして憤りがあった。
シーチキン

いくつか、シーンの切り替えのまずさや、無用、不要に長いシーン、さらにサントラがあっていないなど、演出上の不備が目に付いたが、全体としては、渋い時代劇の魅力が堪能できた。

また前半の仲代達矢西村晃の居合い抜きなど、緊張感ある殺陣も心地よい。これぞ時代劇の傑作の名に恥じぬ一本。

最後の方で、炎上するかがり火が荒れ狂う海に、崖の上から落下するシーンの迫力は相当なもの。ロケについての規制の問題もあるだろうが、近頃ではまずお目にかかれぬ迫真にして、美しいカタルシスあふれるシーンで、それだけも見た価値があるシーンだった。

他にしびれたのは「金打」(キンチョウ)のシーン。「二度とこのようなことを繰り返さぬと約束いたせ」と迫る孫兵衛に対し、黙って刀のつばを鳴らす帯刀。

約定をたがえぬ、という己の誠意を示す「金打」である。こういう細かい所作にこだわる時代劇が昨今はとんとみられないだけに、ひときわしびれた。

(評価:★5)

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