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[コメント] ショーシャンクの空に(1994/米)

「感動するでしょ、感動するでしょ」と言わんばかりの、何とか人を感動させようという小細工が、無様なほどに目につく。なぜなら、この映画は根元のところで釈然としないからだ。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ともかく釈然としない。ヒューマンドラマに脱獄をつけ加えたものだが、脱獄モノとして見れば、意外性はともかくスリル感がほとんどない。

それに何より致命的に感じられるのは、「脱獄」というのは、どう転んでも「非合法」なものであり、ここから主人公は脱獄に成功してもその時点で犯罪者なのである。

ハナから犯罪者が主人公の脱獄モノなら、スリルとサスペンスに徹底してこそ、ピカレスクロマンみたいなものも感じられるし、そういうものと割り切れば、爽快感もある。

また、無実の罪や理不尽な理由で投獄された主人公が脱獄するのなら、今度は脱獄後の主人公の行動が問題になってくる。自分の無実を晴らすなり、理不尽なものに闘うなり、少なくとも、脱獄者としての「汚名」を背負いながら、何をするかが大事だろう。

ところがティム・ロビンスは、不正蓄財した所長の「ブラック・マネー」をまんまと横取りしている。いくら無実の罪で投獄され、その無実を晴らす道を理不尽にもさえぎられたにしても、これではティム・ロビンスも、ただの犯罪者ではないか。

こうして、この映画は一種の完全犯罪モノに、まっとうに出所したモーガン・フリーマンを配したことによって、ヒューマン・ドラマ風の味付けをしたに過ぎず、その薄っぺらさが、返って「感動してくれ」という見え透いた意図のあざとさを浮き彫りにしているように見える。

さらに言えば、まったくの状況証拠だけで有罪判決=終身刑というティム・ロビンスの「無実の罪」も、あまりにもわざとらしいし、「無実の証拠」なるものにしても、何の根拠もない伝聞にすぎない。まあ、あれで有罪判決になるのだから、無罪になるのもあの程度で十分ということなのか。

このずさんさが、ますます「この映画の売り物の「感動」には関係ないことだから」と開き直っているようで、最初から最後まで、この映画を釈然としないものに仕立てている。

まだいっそのこと、巧みな人心掌握で、周囲を完全に信用させてから、まんまと脱獄し、さらに悪徳所長の上前をはねて、優雅な海外逃亡を実現した元エリート銀行員の、天才的な完全犯罪モノ、とした方が映画としてすっきりする。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)モノリス砥石 ぐるぐる ゑぎ m[*] Ribot[*] ボイス母[*] ALOHA[*]

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