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[コメント] 男はつらいよ 寅次郎真実一路(1984/日)

「あんなきれいな奥さん大原麗子がいながら、もったいねぇ。俺なら一日中、顔を見てる」と言った時の寅さんは、絶対的に正しい。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







結構こったオープニングのシーンもそれなりによかったけど、やっぱり寅さんがいい。

特に、最後、さくらとの電話のやりとり 「よかったね、お兄ちゃん」 「ああ、よかったよ。ほっとしたよ。」

万感、胸に迫る名シーンだ。

もう一つ、山田洋次のうまさにうなったシーン。それは、証券会社の会議室でみなが、寅さんが持ってきたバナナを食べるシーン。

バリバリのビジネス・オフィスに最も似つかわしくない寅さんが、その辺の果物屋でひょいと買ってきただけのように、紙で包んで紐でくくっただけのバナナのお土産。

最初、 米倉斉加年が困ったようにバナナを受け取ったときは、ひょっとして捨てちゃうんじゃないだろうかとさえ、思った。

ところが、シビアーで、バリバリやってる会議室にぽつんと置いてある。その内「なんだこれ、ジャマだな」とぽいされるんじゃないか、とも思った。けど、夜遅くの会議の後半で、一人がひょいと手を伸ばして、紙を適当に破いて一本出して食べだすと、みんながいっせいに手を出して、部長までもが「おい」と手招きして、バナナを食べだす。

「ああ。なんだ。やっぱみんな、お腹すいてんのやんか。やっぱり大変なんだ。」とほわーと思えて、「企業戦士」って言っても、寅さんと同じ人間なんだなあ、とまで思ってしまった。

何気ないバナナを使って、そこまで思わせた山田監督の、観察力と演出の冴えを再認識した。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)G31[*] 寒山拾得[*] TOMIMORI[*] m ina けにろん[*]

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