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[コメント] アメリカン・ヒストリーX(1998/米)

エドワード・ノートンが達者な演技を見せて、ネオナチの軽薄さと、そこからの脱却を自然に演じてみせたのは秀逸。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







刑務所に入ったノートンは自己の身を守るために、ハーケンクロイツの刺青を誇示して、ネオナチグループに入る。この時、彼にはネオナチが、汚らわしいものたちを蹴散らし、さらに自分を守ってくれる、素晴らしい集団に見えていたのだろう。

ところがその素晴らしい集団が、なんと、こともあろうに黒人グループと怪しげな取引をしているではないか。「貴様らは腐っている。ネオナチはそんなゲスなことはしないんだ!」と決別した彼に襲いかかるのは、なんとネオナチだった。

見ようによっては、ノートンがネオナチとしての筋を通したかのようだ。彼は刑務所内で、自己の安全を守っていた「ネオナチグループ」の一員ということを自ら拒否するのだから、言ってみれば自分をかえりみず思想を貫いた、ともいえる。

では、彼がそうまでして貫いた「正しいネオナチ」という思想は、そもそも彼が人生を賭けるにふさわしいものだったのだろうか?このことに気づいたときに、ノートンは自然にネオナチから脱却できたのではないだろうか。

人が、一つの思想なり哲学なり世界観なりを持って生きようとするとき、その内実が絶えず問われる。人生を賭けるべき思想を持つ事が大事なのではない。より大事なのは、その思想なりの中身、ではないだろうか。

見終わって、そんなことを考えさせた映画であった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)kazby[*] m[*]

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