コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] まほろ駅前多田便利軒(2011/日)

すれ違い、人との距離、価値観、松田龍平、瑛太。どぎつい設定の数々が芝居の小道具のようにごとりと放り出される。映画らしさに芝居小屋の風味が効いている。唐組麿赤児の血を引く大森監督作品がゆえか。結構好きだわ、この映画。
ロープブレーク

つながらないながらのつながりがこの映画の主題と言っていいのかな。それぞれの登場人物が、それぞれの価値観で生きている。それらが過干渉しないことで、誰かの一つの価値観の物語にはなっていかない。それでいながら、つながることができる。予定調和を拒否したメタレベルでのつながり。浪花節(瑛太が演じている)でなく相互依存でもない、しめったとかかわいたとかの形容ではない、個人のつながり。価値観や世界観をもとにしない信頼のない信頼関係。ハリネズミの愛の距離。松田龍平を使うことでうまく表現されたこの妙な宙ぶらりんの安定感は、「クレイジーハニー」的狂気からの救いにも、「アリゾナドリーム」的な引力圏からの脱出の処方箋にもなりうる、日本の奇跡であるのかもしれない。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。