この映画、キュビズムの絵画（ピカソのゲルニカみたいなやつ）のように、同じ事象に対して複数の視点から語られるという構成を取っているのですが、前田君（神木隆之介）が映画館で偶然、橋本愛が『*鉄男』を観ていたところに居合わせるという事件から、彼の視点が複数の視点の中心として立ち上ってきます。うまい！そして布石としての原作からの設定変更。前田君の好きな映画は岩井俊二からジョージ・A・ロメロ、愛読誌は「キネ旬」から「映画秘宝」。この世界観の巧みさゆえに、私はまんまとはまり、前田君がカメラを回しながら指示を出し、映画部員がゾンビとして映画部の行為を理解しない高校生を襲うシーンに涙しました。

それにしても、皆さん演技が超うまいです。ヤな女子高生（松岡茉優）とか意識が自己中な映画部員（前野朋哉）とか上手すぎ。あとキャスティングも上手い。坊主頭の野球部員（高橋周平）とか桐島の彼女（山本美月）とか。

べゲットとの類似性とか、オマージュが捧げられている映画作品の解題とかについては、シネスケの他のレビューや町山（智浩）さんの映画評で書きつくされていると思いますので割愛しました。というか半可通なので書けないし。とにかく、制作に関わった人全てにお礼を言いたいくらいとてもすばらしい作品でした。