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[コメント] ホリック xxxHOLiC(2022/日)

写真家出身の蜷川実花監督は、立体的なセイ(生/性/聖/世…)を平面化することに美学を感じているように見える。その点で本作は監督本人に取っては恐らく成功作なのだと思う。だが、氏の美学に1ミリも共感できない私にとって、本作は残念な作品である。
ロープブレーク

あやかしを描くのにこれほど不適任な監督もいないだろうと思ったが、柴崎コウの霊能者メイクのあまりの完成度の高さに釣られて見てしまった(そっくりな霊能者の方を存じております)。結果、やはり不適任この上なかった。

何も怪しくない。怪異の欠片もない。学芸会調の悪しき日本映画がまたひとつ増えただけなのだが、松村北斗のインタビュー<https://eiga.com/news/20220316/15/>を読むと、どうも学芸会調演技は監督の意図通りらしい。

本作は、学芸会調の作品のわりには学芸会としてのある種の完成度の高さが感じられるため、これは蜷川実花監督の美学、3Dを2D化することに美を感じる性癖なのだろうと思い当たった。

恐らく日本的なあやかしの雰囲気を平板に塗りつぶしてしまう趣味は親子共通の悪癖なのだろう(蜷川幸雄と唐十郎の演出の違い!)。

侑子(柴崎コウ)のモチーフが蝶なのも、生き物を標本(2D化)することに美を感じる監督の意思の表れなのかもと思った。

だとすれば、2D化に抗えるほどの存在感を俳優が見せ、監督とのせめぎ合いがスクリーンに滲み出てくれば私好みの作品になっただろう。

吉岡里帆が松岡茉優で、磯村勇斗が村上虹郎で、玉城ティナがティーンの頃の石橋杏奈であったら…などと妄想してしまった。…、神木隆之介は演出に服従するタイプの俳優であったようだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)死ぬまでシネマ[*]

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