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[コメント] ラストスタンド(2013/米)

これは珍しい、シュワルツェネッガー主演の「媚びない映画」。
ダリア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







過去にヒットしたシュワルツェネッガー主演作といえば、最新鋭のSFX技術をふんだんに用いた大掛かりな大作(大作“もどき”も含む)が多かった。そしてその中には、映画ファンがニヤリとするような自身のかつてのヒット映画のパロディが節々に挿入されている。

また、近年の作品では、厳しい暴力規制を意識して、作中で一度も銃を撃たい映画を撮ったり「娘に暴力を見せたくないから〜」と暴力を回避する戦闘シーンがあったりと、かなり規制に苦しんでいる風な映画作りをしていた。

そんな風に、過去の作品では良くも悪くも「見る人に媚びる」姿勢が見て取れていたのだが、この作品は違う。そうしたシュワルツェネッガー作品独特の媚を、一切見せていないのだ。

R指定をものともせずにガンガン銃を撃ちまくり、脳みそが一瞬のうちにこっぱ微塵に吹き飛んだり、ちぎれた腕がゴロッと上から降ってきたりもする。彼の中に「暴力シーンの排除」という文字はこれっぽっちも見えない。そしてパロディ台詞は、あのお決まりの「I'll be back」の一行すら出てこない。彼の大ファンであり出演作を全て見ている私も、ターミネーター以降この台詞を言わない主演映画は初めて見た。

このように、ファンサービスも暴力規制に対する遠慮も全て捨て去り、観客に媚びず、ある意味シュワルツェネッガーというブランドを捨てて挑んだこの作品は、しょうもない遠慮や小手先のファンサービスは必要ないんだなと思えるほど、とても良く出来ていた。

恐らく低予算でとてもシンプルな作りながら、ストーリーはよく練られていて面白い。特に序盤からの、点と点が徐々に繋がっていく面白さ。そして自身のパロディではないけれど大人がクスッと笑えるユーモアもある。もちろんツッコミたい部分はあちこちにあるけれども、シンプルだからこそ初めから終わりまでブレない空気や作品の持つ勢いを感じる良作だ。

でも、ただひとつだけツッコみたい。実は私も、「麻薬王が通り過ぎる30分だけ背を向けてればいい」というフィギー副保安官の台詞に同感だ。それを言ったら映画が成立しないけどな。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)トシ ペンクロフ[*] 3819695[*] セント[*] けにろん[*]

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