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[コメント] コラテラル・ダメージ(2002/米)

自称「シュワマニア」による『コラテラル・ダメージ』及び「シュワリズム」に関する考察(レビュー長っ)
ダリア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







注・一部『コマンドー』『イレイザー』『シックス・デイ』のネタバレを含みます。

私はアーノルド・シュワルツェネッガーの熱狂的ファンである。彼の出演作品は全てビデオを保管して、時折ニヤニヤしながらケースを拭いてみたりしている(怪)。当然パンフも全部揃えた。どんな小さな記事も切り抜いてファイルしている。彼の著書、関連書、またあらゆる資料を収集するのが私の生きがいとなっている。日本国内未発売のものでも海外から買ってしまう。ここまでいくと「シュワマニア」もしくは「シュワオタク」と呼ばれてしまいそうだ。事実そうかもしれない。そのうち「シュワルツネッガーの全て」などというカンチガイした本を出版しかねない自分が怖い。

こんな私であるからには、彼の最新作である『コラテラル・ダメージ』をトコトン語らなければならない。(←イヤ、誰も語れとは言ってないが・・・)

まず、「シュワリズム」という言葉について。 直訳すると、「超豪快主義」とでも言おうか。テレ東がシュワ映画を表現するために考えられた言葉らしいが、悲しいことに世間一般にはもちろん、シュワちゃんファンの間にも広がらなかった言葉である。

この「シュワリズム」という言葉に代表されるように、恐らく多くの観客はシュワ映画に「超・豪快」を求めているらしい。 例えば『コマンドー』『イレイザー』のように、問答無用に銃をブッ放すシュワ。理屈はいらない。ただ、観ている方がスカッとするほどドカドカと銃をブッ放していればいい。これが「シュワリズム」的映画の王道と言えよう。

近年、映画に対する「暴力描写」が問題となっており、シュワちゃんも結構気を遣っているようだ。例えば『シックス・デイ』。娘を救出するシーンで、「娘に暴力を見せたくないから紳士的にどいてくれ」というシュワの台詞がある。気を遣っているのがヒシヒシと伝わるシーンである。昔のシュワならこんな事は言わなかった。『コマンドー』に至っては、平気で娘の前で敵を血まみれで殺していたではないか。

もちろん、暴力描写だけではない。シュワ自身も自分のイメージクリーンアップのために気を遣ってのことだろう。

さて、話が他の作品に脱線してしまった。この作品の話に戻そう。

この映画の一番のポイントは、「銃を撃たないシュワ」である。今までならば銃で撃ち殺して終わるところを、かなり無理のある展開での殴り合いで片付けている。果たして一般の観客は「銃を撃たないシュワ」を求めていただろうか。甚だ疑問である。

また、「復讐には復讐を」と、これまたかなり無理のある設定で爆弾を武器に用いている。さすがに殴り合いでは解決しないようなシーンを、爆弾で片付けている。 これはどうだろう。爆弾なら良くて、銃だとダメというはずはない。結局人は殺しているのだから、どうかすると他の人まで巻き添えにしてしまう可能性のある爆弾の方がタチが悪いかもしれない、と私は思った。

さて、前2作に続いて、今作もヒットしなかった。この理由は明白である。 多くの観客が求めているだろう「シュワリズム」の欠落のためではなかろうか。

また、シュワ自身の年齢的な衰えもあるだろう。今までは「超人が暴れ回るアクション大作」であったはずのシュワ映画が、近年(特に今作では)「普通のオッチャンが頑張るアクション?」に仕上がっている。年齢に関しては仕方がないことだが、もうちょっと「自分らしさ」を出してもよかったのではなかろうか。彼には彼の、絶対に誰も真似できないモノがあるのだから。

余りにも有名な「9・11テロ事件」に関しては、これは運が良かったのか悪かったのか・・・確かに、この映画は「テロ事件」を避けては通れない。「便乗した」とも言われているが、あくまでもこの作品は事件の前から企画・撮影されていたものであり、便乗したと非難されるのは運が悪い。 しかし、事件のせいで注目を浴びたのも事実である。正直、この事件が起こらなかったらこの映画は興行成績でもっと悲惨な数字を残していたかもしれない。そういった意味では、運が良かったとも言える。

ここまで悪口書いといて何故4点をつけたかというと、この作品におけるシュワの、演技力の向上を買った。

例えばゴーディが「コラテラルダメージ」という言葉を聞いて放送局に殴りこみに行くシーン。今まで見られなかった、キレたゴーディが感情的になって殴りこみ、当り散らす。家族を殺されておきながら「仕方がない」と言われた男の怒りが伝わる、いいシーンである。この場面のシュワの演技は、「大根」の代表的俳優とは思えない、迫真の演技であった。成長したなあ、シュワちゃん。

また、一人家で悲しみに打ちひしがれるところに電話が鳴る。家族3人の可愛らしい応答メッセージが流れ、吹き込まれた伝言は無神経な取材の依頼。ここでゴーディはキレて電話機を投げつけてしまう。ここも大変見所のあるいいシーンだ。幸せ一杯のメッセージ、それは幸福だった頃のゴーディの生活の全てを象徴している。 その幸福が一瞬のうちに崩れ去ったことを巧く表現している。

・・・おっと。そろそろ本編に沿ってレビューを・・・と思ったらもう前置きだけでこんなに長くなってしまった(大汗)。これ以上書いてもサーバーの負担になりかねないし、なにより誰も読みたかねえよ、と思っているに違いない。

最後に。私はシュワが「観客が自分に求めているのはアクションだ!」と言い切って、アクション映画にこだわり続けている姿が好きだ。潔い。歳を取ろうが作品がコケようが、アクションにこだわるシュワ。脱アクション宣言をして、またアクションに戻ってくる某俳優もいる中、彼の姿勢は本当に潔い。

体力的限界を感じたら、迷わずに政界に行ってね、シュワちゃん。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)死ぬまでシネマ[*]

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