[コメント] ノーカントリー(2007/米)
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old manとは誰を指すのか。もちろん、保安官のベルの事だ。自分のテリトリーで事件が起こっても、到底理解出来ないその事件に、彼は能動的に動く事が出来ない。むしろ、部下の後ろに隠れたり、報告をカフェで聞くだけで、捜査を拒絶しているようにも見える。これが冒頭で彼が言っていた、『理解できないものに直面したくない』という部分だろう。
しかし彼がやっと重い腰を上げた時には、事件は終息に向かっており、最悪の結果に。逃げ続けてきた自分への贖罪のためか、現場のモーテルに戻った彼は、鍵穴の影から犯人がまだいる事を察知。けじめをつけるため銃を抜き、犯人との対決へ向かうが結局は何もできず。むしろ誰かがいると直感したのに、またも逃げてしまった。これも、冒頭で彼が言っていた『もし、直面した時は、覚悟してこの世界の一部になろう』という宣言にも反する。
つまり、これはベルのベル自身との戦いなのであって、結局彼は敗北したのだ。老いてしまった老人は人生の落とし前さえつける事が出来ず、彼は残りの人生、後悔しかないだろう。これが人間の人生観(シガーやルウェリンなどの生き方も兼ねて)を描いた映画と捉えれば、ジャンルはサスペンスよりもドラマだろう。
視聴者の視点によって、随分印象が変わる珍しい映画だ。そういう意味では大変貴重で奇抜な作品だと思う。
話は変わるが、シガーがおばちゃんには頭が上がらないシーンはとても面白い。おばちゃんにルウェリンの職場を聞いても拒絶されまくって諦める、モーテルの受付のおばちゃんには弱そうな顔をする…など。コーエン兄弟も、ママには頭が上がらないのだろう。
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