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[コメント] ゴッドファーザー(1972/米)

抗争のバイオレンスだけ楽しむと3時間は長すぎるし飽きる。中だるみも多いし(特にシチリアのパート)後半20分の駆け足っぷりは無茶だなと思う。だからこそ、ドラマの深読みをしてもらわないと真価が分からない作品でもある。90/100
たろ

**ネタバレ注意**
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濃厚なテーマと血生臭い抗争がゆえ、鑑賞は是非18歳以上を推奨したい。

まず圧倒されるのは映像の迫力と美術。何から何まで魅力的に撮れていて、テンポが悪くとも3時間飽きがこない。映像美では映画界でトップではなかろうか。キャスト&スタッフが青筋立てて苦しみながら撮ってるんだろう雰囲気がムンムン感じられる。これこそがマニアのボルテージを上げる一番の要因であるし、本作が賞賛され続ける作品である確固たる証拠だろう。

テーマもはっきりしている。前半と後半のマイケルの変貌ぶりが示すように、これは変遷の映画だ。コルレオーネ家の変遷がどのように成されるか。ハト派(ビト)とタカ派(マイケル)が対立するのでなく、家族を守るためにどちらを選ぶべきなのかという苦悩を描いており、一般家庭にも通じるテーマだという所が深い。

また、これはマイケルの受難の物語でもある。戦争の英雄(時代背景を考えれば、敵兵をたくさん殺したのだろう)で、人殺しの経験もあるのに、描かれる人物像は温和で恋人を想い、家族を大切にする男である。戦争での心傷は伺えないが、平穏な生活を望んでいるように見える。しかしそれが抗争に巻き込まれ、父を守るためまた殺人を犯してしまう。それがきっかけになったのか、暴力を防御の手段として肯定し始め、マイケルの隠れた暴力性が引き出されてしまったのである。それも、抗争という他人が起こした事によって。この変遷が、マイケルにとって必然の悲劇という点にも着目すれば、本作が極上のドラマとして楽しめる事は間違いない。

正直に言うと、抗争のバイオレンスだけ楽しむと3時間は長すぎるし飽きる。中だるみも多いし(特にシチリアのパート)後半20分の駆け足っぷりは無茶だなと思う。だからこそ、ドラマの深読みをしてもらわないと真価が分からない作品でもある。なので、ある程度脳みその発達した頃(根拠はないけど)である18歳以上、または500本以上映画を観た15歳以上の映画バカにおすすめしたいのだ。

(評価:★5)

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