少女に開眼したオッサンの青春セカンドステージという変態コメディの形相を呈しながら、実は家庭崩壊の過程を描いた深い問題作という異色の作品。ケビン・スペイシーの怪演が見所だが脇を固める高校生3人&嫁さんの存在感も抜群。

レスターの家族は最初は理想の家庭だったが、いつからか上辺だけの関係になっていったようで、しかしそれは家庭の自然な流れかと思う。だって父、母、子供それぞれの立場があり家庭というのはこれらバラバラの人間の集合体なのだもの。歳、性別が違えば考え方も違う。そんな人達が集まったところで「家族だから」という感情論以外で繋がりを保てるものなのか。本作はそんなテーマに切り込み人間の醜態を面白おかしく描いてくれた。

浮気相手の趣味に感化されて銃にハマる奥さんの流れも自然でいきなり危ない雰囲気になるけど、最後に奥さんは拳銃持ち出して何する気だったんだろうか？レスターを誰が殺したのかという伏線だろうがそこが謎。犯人のクリス・クーパーの動機も殺すほどとは思えず消化不良だが、世の中何が起こるか分かったもんじゃない。そう思わせられただけでもゾッとする、コメディでありドラマでありホラーでもある複雑な映画だ。精神的に大人な人以外は観ない方がいい。