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[コメント] おおかみこどもの雨と雪(2012/日)

高水準な細田演出に支えられた危うさ。一定以上の満足感を得られるだけに尚更。
ガリガリ博士

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







物語終盤でおおかみこどもたちは、それぞれの進む道を選択する。しかし、なぜその結論に至ったのか、いささか説明が不足してはいないだろうか。

狼として、もしくは人間としての道を選んで歩ということは、自己の片側のアイデンティティを否定するという一大事である。弟くんならば、人間社会に愛想を尽かす理由が必要だったように思う。狼としての本能にまかせるままに山へ向かったように見えるが、人間を捨てる理由としては弱い。姉もなぜ人間社会を選択したのか。夜の教室の種明かしシーンも結構唐突な展開だ(情緒的な演出に目を奪われてしまうのだが)。あの転校生とはそういう関係性でしたっけ。

細田監督の演出レベルはますます高水準で、その場面・瞬間では高揚する画面が繰り広げられるため、いっけん満足してしまうのだ。これが局所的なカルト的支持で済むだけならばよいのだが、日テレは明らかに宮崎作品のヒット性を求めている。仮に、将来妙な方向へと進んでしまったとしても無条件に良作の評価を獲得するような商品になりやしないか、今から余計な心配をしてしまうのである。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)死ぬまでシネマ[*] 林田乃丞[*] 4分33秒 赤い戦車[*]

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