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煽尼采さんのコメント: 投票数順

★3華氏451(1966/英=仏)焚書の炎が焙り出す、観客の読書観。映像、文字はどちらも視覚媒体だが、前者が後者を排除する社会に於いて、声が両者の中間地帯を成す。思想統制への批判と、メディア論的視座が中途半端に混在した不徹底な内容だが、題材が題材なので思考は刺激される。 [review][投票(3)]
★3転々(2007/日)いい意味でスケールの小さいロードムービー。殆どのショットが奥行きのある構図を採っているにも関らず、その風景が、登場人物達が他愛のない会話をしながら歩いている路の延長線上にある事で、妙に平坦な印象になっているのが面白い。 [review][投票(3)]
★4デルス・ウザーラ(1975/露)橙(暖色)と青(寒色)の光によるモノクロームとも呼ぶべき単純化された画面の強度がピークに達する、第一部の終盤。その抽象化され純化された生死のドラマは、この映画自体の存在価値を確立させている。惜しむらくは、まさにこれがピークだった事か。 [review][投票(3)]
★2夜のピクニック(2006/日)移動撮影は別称‘トラヴェリング’とも呼ばれるが、全校生徒が二十四時間かけて同じ道を歩き続ける、という大移動の中で展開される物語というのは、その絶好の被写体ではないか。と思いきや、 [review][投票(3)]
★5インランド・エンパイア(2006/米=ポーランド=仏)リンチ自身の手持ちのデジカムによる撮影は、フィルムの質感を犠牲にしてはいるが、手振れや、不器用なズーミングが、覗く者=リンチの身体性を感じさせる。彼の主観に身を重ね、眼前の光景に立会う気持ちで観れば、奇妙な味わいが愉しめる。 [review][投票(3)]
★4リンダ リンダ リンダ(2005/日)被写体を突き放すのでもなく、見守るのでもなく、そのリアルな生態を覗いているようなロング・ショット。ライヴ本番までの苦闘を、正攻法の「汗と涙」で描くのではなく、少女たちが見せる疲労感で間接的に表現する、その距離感と低温さが山下監督的。 [review][投票(3)]
★4マディソン郡の橋(1995/米)厚い時間の層を感じさせる、緻密なディテールの積み重ね。台詞も、ショットも、表情も、全てが圧倒的に「時間」を背負っている。二人が微妙な感情のあやを触れ合せながら関係を深める過程は、淡々とした中にも、重い時間の層が動くドラマ性が迫ってくる。 [review][投票(3)]
★3Shall we ダンス?(1995/日)生真面目さと滑稽さが、「小津的な構図主義」という名のステップを踏む。その整った画面設計と編集のリズムが、社交ダンスの美意識と調和する。僕らは観ることで一緒にステップを踏むのだ。そして、その規則性から外れてしまう登場人物が笑いを生む。 [review][投票(3)]
★3アヒルと鴨のコインロッカー(2006/日)ポップでちょいシュールなテイストながら、意外にテーマは深い。ドストエフスキーのように深い、と敢えて言おう。だがショットのつなぎ方はあまりに愚直で、脚本がトリッキーなのに冗長に思えるのが惜しい。この空気感は好きだ。きっと原作が良いんだな。 [review][投票(3)]
★4地下鉄のザジ(1960/仏)繰り広げられるアクションの激しさのみならず、物、時間、情況、アイデンティティ、秩序、云々が素早く交替し合う激しさが巻き起こす、観念のスラップスティック・コメディ。ポップでキッチュ。パリの色彩と、エッフェル塔の幾何学的な美しさ。 [review][投票(3)]
★5夜顔(2006/仏=ポルトガル)世の殆どの映画は、映像の中の風景や人物を、何らかの語りの効率の下に切り貼りすることで、この豊饒さを放棄しているのだ。この名匠の手の中では、物語ではなく、時そのものが語る。 [review][投票(3)]
★3街のあかり(2006/フィンランド=独=仏)アキ・カウリスマキ的演出は彼自身にとってさえも困難な妙技であるという事。だが、単純な希望を見出す事は、単純な過程ではない、という事は痛切に伝わってくる。 [review][投票(3)]
★5ダークナイト(2008/米)前作『バットマン ビギンズ』は“恐怖”を巡る重厚なドラマだったが、その“恐怖”と無縁なトリックスター、ジョーカーの登場が、闇の仮面を被った正義の限界を抉り出す。ヒーロー物の一つの限界へと到達した、選択、逆転、倒錯のドラマ。 [review][投票(3)]
★2蜘蛛巣城(1957/日)鷲津(三船敏郎)の演技は演劇調の大芝居、その妻・浅茅(山田五十鈴)は能の如く静謐で精妙な演技。沸騰する怒鳴り声と、細く冷たく震える声。床をドカドカと踏む足音と、神経に触れる衣擦れの音。対照的な二人の対話を軸に据えた構成は面白いが…。 [review][投票(3)]
★2生きものの記録(1955/日)妄想ではなく、感受性の問題としての、強迫観念。 [review][投票(3)]
★3冒険者たち(1967/仏)少し言い難いけど、この作品の宝石的存在であるレティシアの事が、好きになり切れない。尤も、彼女は鉄と海のポエジーとして要請された存在なのだろう。それと、単細胞気味なレオス・カラックスは、この映画で爆破シーンの詩的な演出を学んだら良いと思う。 [review][投票(3)]
★4エイリアン2(1986/米)エイリアンとの闘いを通して、人間性という外皮を破って内から現れる、生物としての本能。我々の内なるエイリアン。複数形の‘Aliens’には、ヒト自身も含み込まれているのではないかとさえ感じさせられる。(終盤について→) [review][投票(3)]
★3スパイダーマン3(2007/米)崩れゆくものを必死につなぎとめるという事。サンドマンの事だけを言っているのではない。テーマである‘報復’と‘赦し’の両方に関わる事だ。 [review][投票(3)]
★4カプリコン1(1978/米)政府は信用ならないと言う映画であり、映像は信用ならないと言う映像でもある。いずれにせよ、本当らしい虚構は人々を楽しませる、という真実の例証のような映画。『2001年宇宙の旅』の対極にある作品。 [review][投票(3)]
★3顔(1999/日)この人生に吐き気を催されながら、生きたままでの“生まれ変わり”を望んでもがく人々の悲喜劇。 [review][投票(3)]