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[コメント] 親切なクムジャさん(2005/韓国)

前作『オールド・ボーイ』と比べると、何か技巧的・人工的に過ぎる観があり、情念を漲らせた役者の顔に、生々しい説得力を持たせる事が出来ていない。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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意外と、所々にマンガチックなCG演出が施されていて、それが嫌味にならず馴染んでいるのは好印象。DVDのジャケット写真などにも漂う、昔の映画のような大時代的雰囲気が漂っている。

ただ、同監督の『オールド・ボーイ』の出来を期待すると、失望。難点は、時間軸を前後させ、細かく各シーンをつないでいく編集の仕方。それによってテンポの良さを生んでいる半面、山も谷も、善も悪も、美も醜も、一緒くたになってしまっている。白と黒を万遍なく混ぜると単調な灰色になってしまうのと同様に、作品全体が平坦な印象になっているのが致命的。そのせいで、クムジャさんの感情の変化や、物語の流れに劇的なものを感じ難い。刑務所での13年間の苦渋も、もう一つ伝わらない。

復讐の果てにある、失ったものが戻らない虚しさ、という主題を「クムジャさん」という呼び名に込める手法も巧いんだけど、編集の段階でもう一つ、イ・ヨンエの演技を活かしきれていない観が有るのが残念。いかにも現代風な、切り替えの早い編集で技巧に凝ってしまったのが、却って災いしたように思う。反面、ラスト・シーンでは、白雪と子供という取り合わせで、純真・無垢を表す、なんていう常套手段に出る所など、どこかチグハグなようにも見える。

自分を陥れた男に殺された子たちの親に復讐をさせる所など、クムジャさんは或る意味、最後まで‘親切’なんだけど、その親切の怖さや虚無観が滲み出てくる辺りが、この映画のキモの部分。結局、クムジャさんの親切で幸せになった人間は、一人も居ないのかも知れない。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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