[コメント] 博士の愛した数式(2005/日)
演出そのものが博士と同じく折り目正しい丁寧さを感じさせるが、台詞回しなどにはやや窮屈な面も。吉岡秀隆は何を演じても吉岡秀隆だが、舌足らずな少年がそのまま大人になったような彼は、少年時代の回想という形式には合っている。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ペペロンチーノさんの指摘されている、何となく撮られたような自然の風景、という点で僕が気になったのは、波打ち寄せる海岸の画。数学教師になったルートが教室の窓からそれを見つめるショットが、回想シーンとの接点になる。画として海を印象づけたいのなら、博士が少年ルートに「1」という概念の不思議について語る場面では、「海はそれ自体が‘一つ’の海だが、その中には‘一’粒の水滴が無数に含まれているんだ」とか何とか言わせた方がよかった気がする。何となく「美しい画」としての海の画というのがどうも鬱陶しく思えてしまう。
終幕間際の能の場面が妙に長いのは、先生の部屋に能面が飾られていた事、博士が未亡人と手を重ねる仕種などから、二人の関係の深さを描く意図があったのだろう。また、微妙な陰影だけで表情を変える能面は、自然界に様々な現象として現れる数学的真理の暗喩とも思える。この場面には原作者の小川洋子氏が観客の一人としてちらっと映っていたように思う。監督としてはそれなりに意志を込めた場面なのだと思うが、そこに至るつなぎが演出的に上手くいっているとは言い難く、何やら唐突な印象は否めない。
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