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[コメント] 女の子ものがたり(2009/日)

女の子三人が一緒に仲よく収まるショットが大部分を占め、あとは風景の中に人物がポツンと見える遠景ショットが印象的。この二つのショットが作品の世界観を簡潔に決定づけている。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







高校生の菜都美(大後寿々花)に彼氏が出来たことで、ショット内での女友達二人との同居から離れること。その二人が、共に男から暴力を振るわれた痕を顔につけていることで、ショット内で三人が同居していても、菜都美だけが二人に対して距離を与えられてしまうこと。帰郷した菜都美(深津絵里)が、かつて自分が描いた絵の前で出逢う少女が、絵に描かれた女の子と同じピンク色の服を着ていること。驚きを与えるようなショットがあるわけではないが、全篇に渡り、画で過不足なく語る姿勢に好感を覚える。少女時代のパートの大部分で少女三人が一緒にショットに収まっていることで、成人パートでの、さえない編集者の他は犬くらいしかショットの空間を共有しない菜都美の一人ぼっち感が際立つ。

惜しむらくは、少女時代を演じる三人が余りに小奇麗な子らで、貧しさと無知と愚かさが、殆ど表面的な体裁すら整えられていないこと。それ故、彼女らの健気な純粋さも、それが格闘する事どもの嘘臭さのせいでインパクト弱。

深津と大後は顔立ちがあまりに違いすぎて、一個のキャラクターとしての同一性が感じ難い。深津が「出来損ないのこけしのような私たち」と回想するナレーションを不自然なく成立させるのは大後だけで、後の二人は美少女すぎ、深津自身も除外される印象。特筆するほど美形でもない、という所に、絵の才能のような特別さを持たない女は小さな町から出て行けないという哀しみが滲み出る筈なのだが、奇麗な女の子たちが悲惨さを頑張って演じているという嘘臭さが否めないのが残念。貧乏で汚いと言われるきみこ(三吉彩花)が全く汚くも臭そうにも見えない点に、本気度の薄さを見ずにはいられない。

原作者西原理恵子(近所のオバサン役で登場していた)の絵柄は決して小汚くはないが、ああいうシンプルで愛らしい、カラフルな絵によって、貧乏でバカで必死な話を成立させられるのは、言うまでもないが、マンガだからだ。実写化にあたって、如何に世界観を成立させるかという課題を真剣に考えた形跡が殆ど見られない。

(評価:★3)

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