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[コメント] シャーロック・ホームズ(2009/米)

それぞれの恋人の登場もゲイのカモフラージュかと思えるほどの相互ツンデレの連続を繰り広げるホームズ&ワトソン君。テンポのいいカット割が連続しすぎるせいで却って、同一リズムに支配された平板さが漂う。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







続篇ありきの半端さも滲み、面白くないわけではない筈なのに、妙な退屈さを覚えさせられる。

格闘シーン前にホームズ師範の解説が入る演出はアクション・シーンの味わいとしての「驚き」や「衝撃」を著しく減じてしまい、意外にスタイリッシュさにも欠ける。が、「いかに理路整然と眼前の敵をぶちのめすか」という格闘理論の解説として見れば面白い。なのにこの演出、二度サラッとやってみせるだけで、ヤマ場で活かしたり、ホームズの推論を更に推し進めることで、計算通りに実行されるかどうかの緊張感を煽ったり、微妙な誤差による失敗パターンを見せたりといったバリエーションの工夫が皆無で、折角のアイデアが勿体ない。続篇でやるつもりなのかも知れないが。

悪役ブラックウッドは、ロンドンはおろか世界中を恐怖の渦に飲み込もうとする黒魔術師としてのスケールを感じさせるには些か顔が弱すぎる。ゆえに、真の脅威はいつ登場するのかと変に期待してしまうのだが、モリアーティがその期待を引き受けながらも半端な描写に終始し、顔も見せぬままに「続篇」へと先延ばしするという、ナメた態度と姑息な根性に呆れさせられる。

製造中の巨大な船や、精肉工場の機械、建設中の新型の橋、といったメカニックな造形物をアクション・シーンに配したり、ホームズの推理に科学的な知識をふんだんに盛り込んだりと、テクノロジーの曙的な時代背景を活かして最後は「電波による機械の遠隔操作」をモリアーティの脅威と結びつける発想は、物語世界の方から観客の生きる現代へとズンズン歩み寄ってくる感覚があって悪くない。テクノロジーと相反するようなオカルト的要素も、魔術の正体がテクノロジーであるということで、却ってテクノロジーの魔術性を際立たせる。

続篇ではモリアーティが電波によって大規模に機械を操作して事を起こすということなんだろうけれど、そこへの期待を煽る演出はもっと工夫した方が良かった筈。自ら観客の期待値というハードルを上げるのを躊躇したかのようなヘタレな印象さえ受ける。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)赤い戦車[*] 死ぬまでシネマ[*] 3819695[*] ExproZombiCreator[*]

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