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[コメント] 黒い家(1999/日)

画と音の不気味さ・違和感・悪寒を極めようという偏執的な拘りだけの映画であり、この拘りの細かさ、その映画小僧っぷりには、お話のいい加減さなどどうでもいいと思わせる力がある。可笑しさと気色悪さも未分化な原初的な異物感が全篇を塗り固める。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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とにかく、理屈抜きの禍々しさの演出への異様な拘りに惹きつけられる。時折、ゆっくりと画面に下りてくる闇や、人物にかかる黒い影、血の赤、パソコン画面の色、大竹しのぶのまっ黄色な服、といった、毒々しい色彩構成。焦点がゆっくりと合っていく、極端なクローズアップ。西村雅彦の、引き攣ったようなギクシャクした仕種と微妙に連動するノイズ音。町田康演じる刑事の、バランスの崩れた体を引きずるようにして歩く様子。大竹と西村演じる夫婦の、人間としての感情を装いながらも上滑りしているような、不安定に上ずった声。最も黒い存在である大竹のシンボル・カラーとして、最も明るい黄色を選択する事によって却って強まる不気味な雰囲気。階段を、ゴン、ゴン、と響かせながら落ちる鉄球、プールの揺らめく水面に水死体のように透けて見える内野聖陽の顔。等等々。時に画面を一色に染める演出と、超クローズアップの手法は、共に、画面を意味不明の色彩の鮮烈さだけで凍結し、その強度だけを伝えようという、もどかしいまでの執念が感じられる。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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