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[コメント] 会議は踊る(1931/独)

会議は踊る、町も宮殿も踊る。主要人物たちが織り成すドラマに合わせてその周囲で歌い踊る群衆が、画面に陽気な華やぎを与える。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







手袋屋の娘・クリステル(リリアン・ハーヴェイ)と、メッテルニヒの秘書官・ペピ(カール・ハインツ・シュロス)が、「(皇帝が花束を)受けとる」「受けとらない」と言い合ったり、「(皇帝が彼女の屋敷に)泊まってく」「帰る」と言い合うシーンでは、果てしなく繰り返される言葉の応酬がそのままリズムを刻むかたちで、町のパレードの光景へと移ってからまた二人の言い合う様子を画面に収める。リリアン・ハーヴェイが実に楽しそうにペピと言い合う様子が愛らしい。

この、主要人物たちがやりとりするその周囲の空間をグルっと見回すカメラワーク。ドラマと歩調を合わせて、周囲の群衆もまた歌い踊る演出が全篇に渡って為され、ウィーンの町が丸ごと浮かれ騒ぐ陽気さが画面に充ちる。クリステルとロシア皇帝・アレクサンドル一世(ヴィリー・フリッチ)が酒場から帰るシーンや、クリステルがアレクサンドルからの迎えの馬車に乗って、彼から与えられた屋敷へ向かうシーンでの、人々の陽気な様子。モブシーンの巧みな演出があることで、クリステルと皇帝が酒場で二人きりでいる光景の幸福感や、皆が舞踏会へ去った会議室で独りナポレオンの終身刑を宣言するメッテルニヒ(コンラート・ファイト)の姿の、ひいては政治的な駆け引きの虚しさも際立つ。会議室で椅子たちだけが、踊るように前後に揺れる愉快さ。メッテルニヒがナポレオンの脱出を知らされるシーンも、群衆が去り、彼が一人とり残されるかたちで演出されている。

アレクサンドルの替え玉・ウラルスキー(ヴィリー・フリッチ)が一人で裁縫をしながら待機するシーンでも彼は歌を口ずさみ、皇帝の代わりに彼が出かける場所も、ロシア・バレエの公演。歌と踊りは絶えることがない。多くの場面で見られるオーバーアクション気味の演技も、作品全体に、踊るような調子を与えている。冒頭シーンで老人がクシャミを繰り返すギャグもまた、初っ端から作品にリズムを与える効果を上げている。

(評価:★3)

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