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[コメント] 恋のエチュード(1971/仏)

観るべきところが皆無だとはさすがに言わないが、やはり僕にはトリュフォーは鬼門。吐き気を催すほどに退屈。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







草上でクロードが、姉妹と仲よくお喋りするシーンでの、「間に挟まれているのは嫌だ」と、二人の間に座っていたのを移動するシーンや、その後の雨宿りシーンで、「手も握ったことがないのに」姉妹の背中で挟まれ、左右から背を押しつけられて暖められること、姉妹がフランスの娼婦についてクロードに訊ねるシーンでの、「教育では教えられていない言葉があるのよ。悪徳を知らなければ美徳のことも分からない」という台詞。対照的な姉と妹との間での二択に右往左往する青年クロードの物語というのに沿ったそれらの仕掛けに少しは興味をひかれかけたが、所詮トリュフォーは、ロメールのような、洒脱さと相俟った知性も、ベルイマンのような、情念のマグマを噴出させるほどに人間心理を切り裂くナイフも、持ち合わせてはいない。結局、トリュフォー似の甘い坊ちゃん顔のジャン=ピエール・レオを、ぬるくて甘いイギリス紅茶に浸したようなこんな映画を撮るだけに終わる。妹が「私は少女の頃から既に清純ではなかった」と、友人の少女とのベッドでのいちゃつきや、自慰行為を止められなかったことを告白するが、当時のあちらの道徳観念では罪悪だったということくらいは知っているものの、やはり、こんな他愛ない事実を深刻に描く演出にはバカバカしさしか感じない。また、全篇に渡って始終聞こえてくるナレーションが何とも鬱陶しい。あのフランス語のモニョモニョした口調で、文芸風を吹かせる台詞を延々と聞かされるのは耐え難いのだ。それに、全体的に甘ったるい雰囲気のくせに、心理描写もカット割もクールに決めている演出がまた、嫌みかつ退屈。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)モノリス砥石 寒山拾得[*] けにろん[*]

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