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[コメント] SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010/日)

美しい思い出を、汚さないでほしい!
SAI-UN

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「宇宙戦艦ヤマト」がテレビ初放映された時(昭和49年)、僕は小学校5年生だった。 当時、男子は「猿の軍団」(TBS)、女子は「ハイジ」(CX)に熱中。クラスメート中「宇宙戦艦ヤマト」に熱をあげたのは、僕の他2人ぐらいだったと記憶している。祖父と父と三人で、毎週欠かさず茶の間のテレビにかじりつくように見た。それくらい熱中して観たんだ。

何故あそこまで熱中したか。それは「宇宙戦艦ヤマト」が「斬新」であり「画期的」だったからだと思う。 当時の僕は、一世を風靡していた他のテレビ・アニメを見ながら「地球侵略するのにあんな馬鹿(な悪役)でいいのか?」「不良少年に地球の平和を託していいのか?」「何故いちいち兵器の名を叫びながら戦うのか?」とか、子供ながらに疑問を感じていた。

そんな時、颯爽とブラウン管に登場したのが「宇宙戦艦ヤマト」だったんだ。 主砲一発撃つのにも手順がある。(アニメなのに)アインシュタイン理論とかいきなり出て来る。 そして何よりも、地球の危機を救うために、謎の美女の声に導かれて「ちゃんとした大人たち」が悩み傷つきながら人跡未踏の航海に旅立つ。・・・子供だった当時の僕にしてみれば、他のアニメに比べて「物凄くリアル」な物語に感じたわけさ。だから熱狂したんだ。

前置きが長くなった。 以前同じような事を書いたけれど、映画はそれ自体「絵空事」だから、「リアルさ」がしっかり演出できないと感情移入できない。いや、この場合「リアル」というのは、"CGが良く出来てる"とか、"時代考証が正確"などという表面的なことじゃなくて、「演出」や「物語」の中に「そうだよな」と共感できる部分(それをストーリーと呼ぶ)がないと、という意味で言っている。

「七人の侍」は、いま観ても感動する。 昭和29年版「ゴジラ」も、グイグイ世界に魅き込まれる。 でも、「宇宙戦艦ヤマト」をいま観ても、いまいち感動できないんだよ、僕は。 何でなんだろうと自分でも不思議に思うんだけど、多分それは、例えば携帯電話がなかった時代に成立した「シンデレラ・エクスプレス」のCMが過去の「思い出」になってしまったように、昔の「宇宙戦艦ヤマト」を現在のスクリーンに再現したところで、共感できる要素がそもそも乏しいって事じゃないかと思うんだ。

たぶん、「宇宙戦艦ヤマト」には、「七人の侍」や「ゴジラ」の底流にある現在の私たちにも共感出来る、人間や社会の普遍的真理みたいなバックボーンがないのだと思う。小学生の僕は夢中になったが、四十路を超えた中年を納得させるには「ストーリー」が薄いのだ。

で、「Space Battleship ヤマト」だわな。 木村拓哉。いろいろ賛否があるようだけど、これだけ無謀な映画を引っ張れるだけの存在感が出せる役者さんって、やっぱり彼ぐらいなんじゃないかと思うぞ。黒木メイサの顔って「スターシャ」っぽくない? イスカンダルの残留思念(?)と融合した時は、やっぱり一瞬でもヌードになって欲しかったな〜。 山崎努の「やる気のない演技」は、病気の影響もあったのかも知れないけど、痛かったなぁ。 ・・・じゃあ結局「映画として面白かった?」と問われると、う〜んと困ってしまうんだな。

「リアルさ」が希薄なんです。 ・軍人は、戦闘中にあんなワイワイ一喜一憂しませんゼ。まるで「素人集団」。あんな連中に地球の危機を託したくないよ。職業軍人と応招した民間人の「所作の違い」とかもっと効果的に演出できないの? (真田さんと徳川機関長は良かった) ・ワープ理論とか、波動エンジンの科学的解説とかないわけ? (現実の宇宙物理学も進歩してるワケだし) ・「コスモクリーナー」の情報がなくて、勘だけで、最後の宇宙戦艦をホントに出撃させるの?(ウソだろ?) ・・・と、まぁ、これもディテール過ぎるか。

明らかに「ギャラクティカ」の影響が見え見えなものの、ガミラスとイスカンダルの新解釈を工夫してみたり、CG合成の「絵作り」は凄いと思う。いろいろな制約条件(が多分あったと想像する)下で、「宇宙戦艦ヤマト」と「愛の戦士たち」の見せ場を巧みにアレンジしてまとめあげた山崎監督には「本当にお疲れ様でした!」と心からエールを贈りたいです。(よくぞここまで、何とかまとめて下さいました!)

でも、残念ながら、それだけの映画でした。

個人的には「思い出」は「思い出」として美しいままにしておきたい。と思う次第。

と言いつつ、やっぱりDVDまで買って、こんな長い感想文を投稿するわけですけど。 2点は、山崎監督への慰労点です。

(評価:★2)

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