★4 | さくらん(2007/日) | 少女の口や食べ方は汚いが、姿勢を崩すことはない。そこまでやると映画にならない。金魚鉢として自己言及されるこの緩やかさは、色彩という静物で動物を圧する以外に語る術を持たない映画の叫びであるがゆえに、悲恋にも構造的な弛みを及ぼしてしまう。 [review] | [投票] |
★4 | フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017/米) | ウィレム・デフォーの徳と手際のよさが彼の境遇をミスマッチに見せる謎に呼応して、その機知は、不幸に対処すべく発動するために、災難の予兆と化す。このつらみは淘汰圧が男にもたらした栄光でもある。肉体という売り物が、母から生活力を奪い続けるからだ | [投票] |
★4 | 犯罪都市 THE ROUNDUP(2022/韓国) | 脅威を適切に判定できない無能力が憎悪を駆り立てながらも、男には無謀に走らずにはいられない暗い情熱に自覚があり、その受動性が先に電話を切られる嘆きとなる。 [review] | [投票] |
★4 | 去年マリエンバートで(1961/仏=伊) | 状況に媚態で反応してしまう女。ガンギマリで暇をつぶす男たち。景物と絡むと下世話にしかならないカメラの挙動と大仰な劇伴は、下世話であるからこそ、女の科を捕捉してしまうと鷹揚と笑いを互換させる。 | [投票] |
★4 | ジョン・ウィック:パラベラム(2019/米) | 下僚の鬱屈に同期しないと成り立たたない話だから、すべてはエイジア・ケイト・ディロンの挑発的な芝居にかかっているし、またそれに成功している。が、キャリア女性への加虐による倫理コードの抵触を恐れるために、遣り口が回りくどくなる。 [review] | [投票] |
★4 | ビースト・ストーカー/証人(2008/香港) | ニコラス・ツェーが真空のように災厄を引き寄せていく偶然の過剰は情実社会の密度を反映しているのだが、不幸の集中に比例して事態は逆に放散し先が見えなくなる。ニック・チョン宅の構造がわからないまま、夫婦の話が進行するように。 [review] | [投票] |
★4 | 河内カルメン(1966/日) | 野川由美子の天然を生活力へ置換する際、淡白が愛の信憑性と矛盾する課題が対生成される。男たちは引き際のよさで女の好意を恣にするが、あくまで引いてしまうのである。これに対応して佐野浅夫は別れの演技で恋心を本物にする。 [review] | [投票] |
★4 | 恋の渦(2013/日) | 友人を選べと背反する選択を迫られる。傍流として背反すべき選択を受容するややサイコ的な感性がある。不倫がかえって愛を実証すると男はいう。友人を選ぶ背反の先には友人と恋人の選択がある。しかし友人を恋しがる男を見て女は軟化する。 [review] | [投票] |
★4 | スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム(2019/米) | 時折視点が合ってしまう。合ってしまうから逸らしてしまう。女の好意を小出しにして恋しさを煽る障害を案分する際に、少女漫画にとってのアメコミの異質性が利用されるだけではない。鬼神は少女漫画に引き寄せられ合理化され、礫岩的構成すら解消される。 | [投票] |
★4 | スパイダーマン:スパイダーバース(2018/米) | ジャック・タチ的な疎外された叔父たちの不穏を範例として、恋人や家族の喪失が次々と派生し明るい筋が陰翳を孕み続ける。その因果の感覚はMJとのすれ違いコントの哀感となり、コスプレ趣味の中年が衣装のまま頓死する醜態を晒すほどその人間類型は重い。 | [投票] |
★4 | 続人間革命(1976/日) | あおい輝彦の色気が男を捕捉した。折伏はナンパ術となり、美青年を唆す古典劇に丹波演説は放縦する。教義の核心へ男を近接させるのは渡哲也の色気。その窮極にある仲代達矢のシェイブドヘッド。今や人間の生理に根拠を得た演説は朗々と昂じ始めSF化する。 | [投票] |
★4 | 震える舌(1980/日) | 発作によって緩急を管理するディザスタームービーの書式が症候を容赦なく記述していく。そのリアリズムは災厄に際した人間の根性を試しつつも、人をモノとして把握するために必要以上に人のドロドロに踏み込めず、かえって前向きな人間観と共振してしまう。 | [投票] |
★4 | NOPE/ノープ(2022/米) | オカルトという仇を見つけた。叛乱するチンプにトラウマがある。これら動物という自然への憎しみを多重のアイロニーが媒介する。オカルトを退治するのは被害者自身とその係累ではない。 [review] | [投票] |
★4 | ナイチンゲール(2018/豪=カナダ=米) | 筋を駆動させる案内人の便利さは能力と徳をリンクさせる。報復を待つまでもなく無能者は全編にわたり懲罰され、歩く災害の迫力と化す。有能な男は迷惑な女を放置できない。 [review] | [投票] |
★4 | ナビィの恋(1999/日) | 西田尚美の非日常的な四肢が闊歩すれば、島は民俗村のように生活感を失い、歌劇を筋へ食い込ませる。脱俗の効用はダメ男たちの生態を抽出し課題を普遍化するが、ダメ男が哀しくなるほど、自由恋愛を否定する封建的遺制の利点が再確認されてしまう。 [review] | [投票] |
★4 | マティアス&マキシム(2019/カナダ=仏) | 色気の演出とは対話中にあらぬ部位へとズレる視線である。自主映画の演技とストリップバーで混線する欲望である。男に覚える色気はステージで踊る女たちの感化なのか。色気は質感を求めズレ続け同性愛を成熟一般の課題へ逸らす。 [review] | [投票] |
★4 | 9人の翻訳家 囚われたベストセラー(2019/仏=ベルギー) | 作家志望者の挫折が商業主義の批判にとどまらなくなる。挫折の辛みの強度が主犯の動機すらも凌駕し、それを才能の持て余しという贅沢病にすぎなくする。作家主義が商業主義批判になる理路は切断され、それどころかその批判が無能力への糾弾へと逆流する。 [review] | [投票] |
★4 | WAVES/ウェイブス(2019/米) | 子どもをあの境遇においても自動的な反応しか期待できない。そこには自由意志がなく話は世界ネコ歩き程度の表層にとどまってしまう。基本的にスターリング・K・ブラウンがしくじった話であり、彼の試練こそ文芸に値する。 [review] | [投票] |
★4 | ビルマの竪琴(1985/日) | 川谷拓三一座に厚徳があり、中井貴一の自己顕示欲に苦悶する彼らが忍びなくなる結果、安井昌二版と違って信仰へのフリーライドが胆力となってしまって、85年版が揶揄の対象になる所以となる。三角山から文太が出現してきたイヤさから何かが歪み始める。 | [投票] |
★4 | 極道の妻たち 最後の戦い(1990/日) | 刑務所で意気地を失っていた稔侍。遭難のトラウマで挙動がおかしくなる中尾彬。行く先々で死体の山を築き、女難の化身となる石田ゆり子。酒精依存の志麻がトロンとしている間に、かたせ梨乃が騒動を引き起こし嵐にように去っていく。 [review] | [投票] |