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disjunctiveさんのコメント: 点数順

★4カティンの森(2007/ポーランド)状況を一種の無能力に見せてしまうのは、そこに善性をあまり宿らせない酷薄な愛嬌であって、それがむしろソ連兵の鼓膜を心配させてしまうような品の良い平衡感覚になっていると思う。[投票]
★4バニラ・スカイ(2001/米)このマブさでは無理もなかろう的な造形の理想化が、現実を希求したり拒絶したりする悲痛さの根拠となる話であるから、今回はキャメロン・クロウの嫋々たる童貞趣味が活かされる場面は多かったと思う。[投票]
★4127時間(2010/米=英)孤立が災厄を招くと脅迫する割に、この明朗な造形と孤立の因果関係が明瞭でない。そこを補うべく滔々と弁舌が振るわれ、段取りを語るつもりのない感覚本意の根性論が時間的に穴埋めされるが、ロール・モデルとしてはやはり釈然としないままだと思う。[投票]
★4将軍たちの夜(1967/英=仏)理性の信奉と人間性の誤配線がうれしい話で、そこから生まれたオッサンたちの緩い紐帯が、眉毛ひとつでワルシャワ市街を破壊しパリを巡るだけで物語を恐怖のどん底に落とすピーター・オトゥールの顔芸に挑む。[投票]
★4シンデレラマン(2005/米)努力の収支が実感できないとしたら? 映画は何らかの指標性を以て、強度の非来歴性に対抗し始めるだろう。強度の占有序列から自ずと顔芸が沸き上がるではなく、より歪んだ顔面が強度の配向を決める威嚇的な空間へと。[投票]
★4フロスト×ニクソン(2008/米)ランジェラに対する追い込みが半ばエンカウントに近い処理になっていて、キャラクターの努力の収支が合わず、観察の拠り所に欠ける。良心の検分のために無意識にマイケル・シーンを誘導する筋だとしたら、キャラの視点と内面の時間配分に納得がいかなくなる。[投票]
★416ブロック(2006/米=独)良心の可視化が問題と言えばそうで、形がなければ語り手の作為が及ばない。もっとも、地縁や血縁が形あるゆえにショートカットとして働いてしまい、スリラーに対して禁欲的な作りにもなっているのだが。[投票]
★4女王陛下の007(1969/英)ドラえもん(ヤクザのオヤジ)を制御するのではなく、むしろ一方的な恩寵に依拠する話である。この万能感は、禍福の尤もらしさを堕落させる効果を持つが、オッサンの寵愛からウフフなパセティックを引き出そうとする問題意識は、三隅版の『斬る』を思わせる。[投票]
★4大いなる陰謀(2007/米)レッドフォード研究室からトム事務所を経てアジア内陸の高原へと、苛烈な前線へ近づくにつれて内容は空疎になるという逆転世界でロバートとメリルの縦皺と横皺が交歓する熟年映画の宴。トムは息するだけで面白く、政府要人コラ画像には腹が軋む。[投票]
★4セックスと嘘とビデオテープ(1989/米)スペイダーを鷹揚に造形した点では文系賛歌であり、そのニート生活も観察に価する。彼の造形がどこまで一貫するかという興味があればスリラーにもなろうが、最後に文系賛歌とナレートフィリアを対立させてしまう機序の理解にはしこりが残る。[投票]
★4新・平家物語(1955/日)時折、不安定な衝迫で受け手の不安を誘いながらも、パワハラに対する反応として雷蔵の欲望はよく理解できる作りになっているので、王朝物に仮託した近代化論としては、『山椒大夫』よりも受け入れやすい。[投票]
★4コックと泥棒、その妻と愛人(1989/英=仏)食べログ炎上必至の横虐は現実感に欠ける。文系賛歌もイヤらしい。リアリズムと語り手の恣意的な欲望を超えた場所にあるものは、中小企業経営者の広蕩たる恣縦が、図解的な舞台装置と劇伴のもたらす明晰さの高みに圧迫される様である。[投票]
★4ヒッチャー(1986/米)出来レースを積極的に開示する心理の謎は前座に過ぎなくて、ルトガーの不可解な造形への興味が、自分だけがルトガーを理解しているという希少性の醸す情熱に取って代わる。あくまでハウエルを立てるという基本に愚直である。[投票]
★4月光の囁き(1999/日)マルケンに言及する最後のつぐみが好きで、このふたりが会話を交わすシーンは皆無なのだが、彼女の言及の示唆する、受け手の知らぬ彼らの生活の映写幕を超えた広がりが、閉塞感を打開してるように思う。[投票]
★4あの子を探して(1999/中国)語り手の情熱がリアルの現場で子役を酷使していそうな臨場感をもたらすと、行動に心理が追従する様が、コミットメントを利用した誘導にしか見えなくなってきて恐怖映画化。[投票]
★4スキャナー・ダークリー(2006/米)当人は混濁しているのに、風景はロトスコープという強引なディープフォーカスで図解化される。つまり、無意識の制御問題の解答としての白昼夢。[投票]
★4トゥルー・クライム(1999/米)天然なのか自虐なのか、語り手の自意識を明かさないところに、老人の性愛を猟奇趣味の瀬戸際に追いやるスリルがある。最後にテンパることで、それが無意識というよりも肉体に善意の宿った結果だったと教えてくれる所長たちもオヤジフェチを煽る。[投票]
★4愛のお荷物(1955/日)階段を駆け上がる三橋達也と高友子の速度が舞台調でフレームに自由が欠ける山村邸の空間を分裂させない。文弱・技術職賛歌のため安心して見られる。小沢栄太郎も東野英治郎もこの世界では幸福そのもので、わたしはしあわせだ。[投票]
★4必死の逃亡者(1955/米)吹き抜け居間の立体構造が、ワークやカット割りに頼ることなく、人を動かすことの楽しさを可能にしている。この往来可能な開放感は、時にスリラーの精緻さを損ないながらも、殺人マシンとしての痴人の制御問題を提起するようでもある。[投票]
★4リミッツ・オブ・コントロール(2009/スペイン=米=日)文系映画。美術館と現代建築めぐりで人はブルース・リーになれる。龍爭虎鬥に挫折を覚えるわたしでも、これを見た後は完全にブルース・リーと化していた。ビル・マーレイもあざといが体は勝手に反応。[投票]