★3 | 天と地と(1990/日) | 人間が下品な挙動を起こさないのは、語り手の文化的背景の賜物であると思う。悪趣味は確かに散見されるが、あくまでキャラの心情に対する隔たりがあるため、不快には達しえない。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 007/ロシアより愛をこめて(1963/英) | 旅客車のコンパートメントの構造が、カバンのガス噴射に至るようなピタゴラスイッチ的顛末の予測という吉兆ないし凶兆の制御を通じて、あの莫迦らしいガジェットの数々を生かしている。 [review] | [投票(1)] |
★4 | テロ,ライブ(2013/韓国) | 巨大な構造物が崩れる実感を、その巨大なる感覚を維持したまま、微視的な視野で把握する作業は一種の矛盾である。モニターに映る倒壊しつつある物体が、直に破壊を及ぼすに至るまでの重々しいタイムラグが、その矛盾を乗り越え、かかる感覚を表現している。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 舞妓はレディ(2014/日) | 娘はサラブレットだから、ある日、唐突に芸が出来上がってしまい、課題が解消される感覚は、周囲の人物たちに担われている。それは、過去に無駄と思えた投資が、今、娘のサラブレット性を通して、結実した感覚。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 名探偵ゴッド・アイ(2013/香港) | アンディ・ラウの亢進する甲状腺が、受け手を飛躍に馴らしながらも、本当に飛躍すべきではないものについては、われわれは確実に認知できてしまう。 [review] | [投票(1)] |
★4 | フライト(2012/米) | フィクションとはいえ、依存症の救済のために人死にを出すとなると、そんな大事をせずに断酒会に集う人々はどうなるのか。体験を書籍として売り物にするデンゼルの神経もわからない。入試のエッセイ目的で親父と和解する息子もどうかと思う。 [review] | [投票(1)] |
★4 | ドラッグ・ウォー 毒戦(2012/香港=中国) | 凡人こそ殺人マシンとする世界観が、香港人のナショナリズムを仮託されるかたちになっている一方で、凡人の報復を喰らった公安のオッサン(スン・ホンレイ)は、なぜゾンビ化してまで戦うのかという、不思議な情熱で物語を普遍化する。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 夜霧の恋人たち(1968/仏) | 多動性障害が社会に受容される様が表現されていて、気送管や靴屋の構造といった、その過程で用いられるガジェットの濃密さが、飽きさせない。派生するゆるふわな恋愛観も、タバール夫人の造形として要約されることで、何か深いものを見た感を与えてくれるようだ。 | [投票(1)] |
★3 | 家庭(1970/仏=伊) | ルームメイトとやり取りするキョーコの芝居が強烈なのは、演出の統制が及ぶべくもないからだ。あの不穏さは、感情のマグマ溜まりとして働き、語彙の制約でそれを直截に表現できないほど、官能のほてりは匂うように、大気に拡散する。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 終電車(1981/仏) | 抽象的な舞台装置と乱雑な舞台裏を往来しても、視覚的な亀裂が生じない。語り手の集中力のなさが、人を動かしてカットをつなぎとめるという技術的な勝利に貢献している。だが、これらは互いに侵食を企てる。侵食するから、愛の形が不明瞭だ。 [review] | [投票(1)] |
★3 | イントゥ・ザ・ワイルド(2007/米) | 親の不和に由来する家庭事情はそのままでは人生の課題として弱いように見える。自分に起因するものではないからだ。ゆえに、放浪と課題がリンクできず、単なる遭難事故の話になってしまう。 [review] | [投票(1)] |
★3 | ベティ・サイズモア(2000/米) | 自助努力の人であり、人生の課題も明確なモーガンが、偶然依存のレニーに引きずられる様は気に食わないのだが、この口惜は、この女性の異教的情景にある悲痛な魅力をモーガンと共有できた証拠でもあるのだろう。 | [投票(1)] |
★3 | 日曜日が待ち遠しい!(1982/仏) | ファニー・アルダンの堤真一顔が、なめらかなシトロエンの平滑面に映えながら街路を運ばれてゆく。その野性的な顔貌を隣でトランティニャンが不安そうに見守っている。 | [投票(1)] |
★3 | ザ・イースト(2013/米) | 仕事ができるという属性とヒッピーの親玉に共感してしまう情緒的な部分が、両立できないように見える。ヒッピー側に、これらの属性を止揚できる魅力は設定されておらず、恋が脚本の都合で左右されている印象が出てくる。 [review] | [投票(1)] |
★3 | きっと、うまくいく(2009/インド) | 言葉に不自由する異邦人への差別と筆記試験批判が両立するのは奇観でもなんでもない。どちらも階級間の流動性を否定しようとしている。この価値観を美談としては受け入れがたい。 | [投票(1)] |
★3 | キャプテン・フィリップス(2013/米) | これはわからなかった。スリラーになるような戦力比ではないし、事件によって醸成される人生の課題がハンクスにあるわけでもない。もっとも観察に値するのは海賊たちだが、彼らの窮乏は、二時間にわたるハンクスの豚のような喘ぎ声に圧殺されている。 | [投票(1)] |
★3 | 凶悪(2013/日) | 老人の虐待は、褒められたことではないとはいえ、世代間の怨念がある以上、そこに嗜虐心を見出してしまうのは自然な感情である。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 悪の法則(2013/米) | 理解を超えるものは、行動を以て表現するしかない。したがって、キャメロンの内面開示がほかのキャラと同様に行われると、かかる俗化で、追われることのスリラーは望むべくもない。むしろ、驚きは転倒した形でやって来る。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 日本の黒幕(1979/日) | 降旗にとっては苦手な題材で、もはやネタと割り切って見てしまった。そんな中にあって、田村正和と田中邦衛だけは相性が良かったらしく、ノリノリに撮られている。二人の役者としての資質が近いことがそれでわかってしまう。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 恋のロンドン狂騒曲(2010/米=スペイン) | キャラクターの抱える課題が、当人のネガティブな性質に去来するならば、課題は効果的に発現する。 [review] | [投票(1)] |