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[コメント] つぐない(2007/英)

コンセプトの重層感と、もったいない失速。
夢ギドラ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







少女はなぜ嘘を言ったのか。あのタイミング。非常に賢い少女だったから嫉妬程度のことではないだろう。セクシャルなものを拒絶しているわけでもない。だって少女自身が水着姿で男をテストしているのだから。噴水でのやりとりを遠くから見ていて誤解した少女。主観的には男の乱暴と支配。嘘の理由は、ここで自分の何よりも、姉を男の乱暴から保護しなければという気持ちが働いているからではないか。そして悲劇が起きる。

本作は、少女の書いた贖罪の物語という構成であるため、過ちを犯したことに対する弁明を少女自身が許していない。弁明が書かれていない以上、彼女の贖罪の人生から、姉への愛の大きさを想像し、汲んでやらねばならない。観客が、彼女が劇中で起こしたような主観的な誤解を起こすと、すぐさま嘘の理由を低俗にしてしまう。綱渡りで観客に多くを求める作品。なんかもう重層すぎて傑作臭がする本当は。

最終的に失速したと感じる原因は、戦争が持ち込まれたりして、少女の内観に浸りきれなかったからだろうか。

少女ブライオニー役のシアーシャ・ローナンはたいへん素晴らしかった。キーラ・ナイトレイは、美しさが求められる場面で、石膏のようなこの世のものとは思えない美しい顔をして、イギリス文芸作は安泰だなー良かった良かった、でも現代劇で都会を駆け抜けるような作品にも出て欲しいんだよなあ、とそんなことを思った。

(評価:★4)

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