コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パッチギ!(2004/日)

俳優(特に若手)が怖ろしく魅力的! しかし「差別」とも「暴力」とも全く向き合おうとしない井筒和幸監督。4点か2点か、迷った挙句の3点です。
Aさの

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







塩谷瞬高岡蒼佑がいまいちイケない(タイプでない)、というだけの理由でレンタルすべきかどうかをずっと悩んでいた作品なのですが(オイ)もっと早く観るべきでした。劇場で観ても良かったぐらい。

とにかく役者が良い。塩谷瞬、いかにも京都のボンらしい軟弱さが可愛らしい。高岡蒼佑の色気といったらありません。沢尻エリカも可憐という形容詞(死語)がまさにピッタリ。他、オダギリジョーから長原成樹に到るまで、良さを挙げ出せば切りがないぐらいの名キャスティング。京都弁もほとんど耳に付く所がありません。

フォーク・クルセダーズの「イムジン河」「悲しくてやりきれない」「あの素晴らしい愛をもう一度」やっぱり名曲。こういうので泣かせるのってズルいとは思うんだけど。

赤かぶれの担任教師や学生運動の京大生が地方出身者だったりする辺りも芸が細かいです。

ロケハンも適格。距離的な問題は別にして(京都タワーの次は渡月橋、みたいな)当時からそう変わっていないのであろう風景をよく探して来たなぁ。

小ネタの連続もそこそこ笑えます。この頃の京都で学生時代を過ごしたかったわ。

んが、差別という問題を扱うならここはどうなんだ、というシーンがいくつか。

康介(塩谷瞬)がキョンジャ(沢尻エリカ)を好きになる、というのは沢尻エリカの可愛さだけで納得させられてしまいそうになりますが、そこに在日朝鮮人と付き合うという事への康介の躊躇は全く描かれていない。ここには「番長(高岡蒼佑)の妹」という漫画のような設定よりも深い何かがあってこそ自然じゃないでしょうか。

自分に差別意識は無いけれども子どもの頃から遊びに行ってはいけないと教えられて来た地域の人、歴史は歴史だけれども現に物騒な地域の人、という、当時の京都の人間なら絶対に持っていたであろう感覚が、康介には全く見られません。康介の母親(余貴美子)だけがリアル。「違う世界の人」という潜在的な差別意識は描かなくて良いのか?

また、チェドキ(尾上寛之)は何故リンチのあと間抜けな事故で死ぬのか。殴り殺された、で良いじゃん。トラック急停止で積んでいた鉄パイプがスポッ、おデコにガツーン!で笑っちゃったよ。当時実際に起こった日本人高校生による在日朝鮮人高校生のリンチ死事件、は映画としてタブーなんでしょうか?

ラストの河原でのケンカも「引き分け」ってオイ! 死人が出ない方がおかしいだろ。暴力を描くなら描き切れよ、井筒和幸監督。血糊の色を変えるだけじゃ済まないんだよ。ケンカをスポーツにしちゃいけないんだよ。

色々と考えさせられる映画です。井筒監督の、特に差別の描き方に対する「甘さ」については、観る人の育った環境(在日韓国・朝鮮人が「隣人」であった都市か、そうでない都市か)によって意見の分かれるところなのかも。僕も地方のベッドタウン育ちだし、やっぱり時代が違うしで、この感覚を十分に理解する事は出来ないんですが。

余談ですが、坂崎(オダギリジョー)が康介と紀男(小出恵介)に「世界に300枚しかない」と聴かせるフォーク・クルセダーズの自主制作盤「ハレンチ」、実家にあります。立命の“ノンポリ学生”だったうちの父親(京都生まれ京都育ち)がこの映画を観たら、何て言うのかな。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)ロープブレーク[*] りかちゅ[*] おーい粗茶[*] けにろん[*] sawa:38[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。