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[コメント] 浪花の恋の物語(1959/日)

時代劇としてのセンスに溢れた、後世の模範とすべき名作!
Aさの

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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原作に加え確固たる時代考証の上に練られた脚本、風俗考証を踏まえた上で細部まで凝りに凝ったセット、衣装、結髪、わざとらしくなく邦楽を取り入れた音楽、どれをとっても時代劇としてのセンスに溢れた、後世の模範とすべき名作!

中村錦之助(忠兵衛)が上手い! 気弱で真面目一方だった飛脚問屋の養子が、梅川を身請けするため「封印切り」の大罪を犯し、梅川を連れて故郷新口村へと逃亡する心理過程をリアルに熱演。 クライマックスである「封印切り」の、此岸から彼岸に渡る瞬間の表情、もう!! 中村錦之助って宮本武蔵やなんかのイメージが強いんですが(観てないけど)こういう役って他にも演ってるんでしょうか。観たい。

有馬稲子(梅川)も借金に縛られた遊女の哀れさを好演。仕掛け(打掛け)を脱いだ肩のラインの美しさと言ったらありません。 高峰秀子岡田茉莉子と共に「日本映画黄金期・三大フテ子女優」として讃えられる(by私)彼女ですが、忠さま恋しさの「だんまりフテ」は絶品。

田中絹代(忠兵衛の養母)、千秋実(八右衛門)、進藤英太郎(槌屋の主人)、浪花千栄子(槌屋の遣手)、東野英治郎(小豆島の大尽)ら脇役陣の、一部の狂いも無い演技がストーリーの必然性を高めます。片岡千恵蔵(近松門左衛門)、一種のストーリーテラーとしての役割を果たすわけですが、彼の重々しさが有無を言わせぬ説得力(力技)。

中村錦之助有馬稲子の舞踊(それほど上手ではない)と、劇中劇の人形浄瑠璃とで「新口村」を入れる構成も好きだなぁ。舞踊(梅に川の裾模様の黒紋付を着て踊る例のあれ)はいろんな意味でもっとたっぷりと見せて欲しかったわ。

いやはやしかし、良く出来た映画。観るの三度目ですが。

(評価:★5)

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