★2 | ジャン=リュック・ゴダール/遺言 奇妙な戦争(2023/仏=スイス) | ゴダール最後の作品にこんな点はつけたくないが、つまらないのだから仕方がない。観客にケンカを売るがごとき冒頭の入り方にらしさは垣間見えるも、あとは偏屈映画老人の落書き帳。ただ、「痛み」のようなものは伝わってくる。ヒップで上等なジジイであった。 | [投票] |
★5 | ストップ・メイキング・センス(1984/米) | ひとつ要素が付け加わるごとに、何かが確実に立ち上がってくる。そしていったん完成するや、音・リズム・動き・照明が一体となって、「意味付け無用」の怒涛の展開。フィジカル面の強度も凄い。ブカブカ服のバーンは舞踏病にかかったお父さんみたいで楽しい。 | [投票(2)] |
★4 | 太平洋ひとりぼっち(1963/日) | 意外に陰鬱なのだが、青春とはそんなものだろう。日本で個人主義を貫けばそうなるしかないともいえる。ひとの話をきいていない青年と太平洋の青。これはやはり裕次郎にしかできまい。ヨットが金門橋をくぐった時、日本の戦後は完成形に到達したと言っていい。 | [投票(2)] |
★4 | 枯れ葉(2023/フィンランド=独) | カウリスマキは勝てそうにない側に賭ける奴で、戦争がおきようが失職しようが、ロマンの方に張るという意思は強固だ。そのダンディズムが古くさいすれ違いメロドラマに息を吹きこむ。今どきタバコをバカスカと吸う映画を撮る非順応主義的態度も称賛に値する。 [review] | [投票(4)] |
★3 | 馬(1941/日) | カラーで観たかった(とくに初夏の野外ロケ)。ゆったりした低音部のある音楽を思わせる力強さ。藁と土のにおい。新旧入れ替わる命の厳粛。デコちゃんは野性味があっていいと思うが、真の主人公は東北の風土だろう。散見されるクドい演出に黒澤の影を感じた。 | [投票(1)] |
★3 | 青春がいっぱい(1966/米) | 1966年のアメリカ(ベトナム戦争は始まっている)でこんな映画をみていたのは誰なのだろう。すべてが絶望的にジジむさく、しかも全員金持ち・白人・カトリックという世界。結末がそれなりに真っ当なだけに、そこへ至るまでのダメっぷりが際立つ。邦題は詐欺。 | [投票] |
★4 | ラブレス(1982/米) | 風俗映画のようで、実は、自己中心的な田舎町の住民(私たちすべてのこと)の尻をけ飛ばす反逆的教育映画。傲慢すれすれの魅力がある。薄幸の短髪美少女と真っ赤なコルベット。ヌーヴェル・ヴァーグにたいするアメリカからの最良の回答のひとつかもしれない。 | [投票] |
★3 | 家光と彦左と一心太助(1961/日) | 城中の部分がお利口すぎてつまらない。しかも肝心の錦ちゃんが太ってしまい二重あご。やたら感激しては泣きを入れるのも湿っぽくていけない。唯一の救いは女優陣。北沢典子は泣いたり殴ったり走ったり大活躍。犬ころのようで可愛い。木暮実千代の貫禄も出色。 | [投票] |
★4 | 座頭市物語(1962/日) | 釣りの場面のすばらしさ。世を拗ねた二人の心が通うには、このくらい淡々としていなくては。月夜のつつましやかな告白も心に残る。そもそも構図がピシッとして良い。この頃の市は感じやすい無頼漢で、なんとも言えぬ上等さがある。最後のセリフも決まってる。 | [投票(4)] |
★4 | 1/880000の孤独(1977/日) | 不適格に生まれついた者の悲哀が胸をつく悲惨な話なのに、なんだか笑ってしまう。「ボロアパート鬱屈系」はこの頃の流行だが、青春ものに回収しなかったのは正解。70年代後半の東京についての優れたスケッチにもなっている。塚本晋也『鉄男』の前駆体だろう。 | [投票(1)] |
★5 | 姉妹(1955/日) | 古い日本映画をみる楽しさのひとつは、まだ「現代」に染まっていない頃の日本を見るおもしろさにある。明るい働きもので、生まじめな理想家だった人々。家族のように仲のいい共同体。まだ生きている季節の行事。この時代の方が良かったなどとはいわないが―― [review] | [投票(2)] |
★3 | ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023/米) | もう千恵蔵・右太衛門みたいなものだろう。何をやってもなんか可笑しい。走っているだけで可笑しい。どこぞで見たような話で、大金をかけているとはいえプログラム・ピクチャーの類なのだが、やっぱり見せる。鉄道のシーンをはじめ「活動写真」の楽しさ満載。 | [投票(2)] |
★5 | 一心太助 天下の一大事(1958/日) | 朝焼けの日本橋を真っ正面から軽やかに駆けてくる錦ちゃん。「絶望です」と言われてドッと笑う魚河岸の兄ィ連。バカかというくらい晴れやかなのである。インテリがなんと言おうと、かつての日本の一般大衆の理想はこうだったのだろう。そして意外に前衛的だ。 [review] | [投票(2)] |
★3 | 893愚連隊(1966/日) | ふつうなら雑魚扱いの連中を主役にすえるのは、当時、一世を風靡した仁侠映画のヒロイズムへの拒絶・軽蔑なのだろう。そこは買いたいが、ケチくさいものはやっぱりケチくさいので困ってしまう。五条楽園をはじめ、場末の京都の60年代の姿を見られるのは貴重。 | [投票(2)] |
★4 | むかしの歌(1939/日) | いかにも関西の映画らしい。セリフの掛け合い。滅びゆく旧文化。昔の商家(手摺りのない階段)や運河での荷揚げ(ロケ地はどこ?)など、細部もいい。『花ちりぬ』もそうだが、この監督の撮るものには繊細さ(繊細過ぎる感も有)と気品がある。花井蘭子も◎。 | [投票(1)] |
★4 | タワーリング・インフェルノ(1974/米) | 9.11後の眼からすると甘さはあるが、それでも来るべき世紀の不吉なヴィジョンを先取りしていた。何か悪いことが起きそうだ、という1970年代アメリカ特有の空気感は的中した。ミニチュアのグラスタワーを仰角で映すカットが前衛芸術のごとき不気味さでコワイ。 [review] | [投票(6)] |
★3 | インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023/米) | 目に力がなく、ぐっとにらみつけても「不機嫌な年寄り」になってしまうジョーンズ博士は悲しいが、全体としては楽しい。紙吹雪舞うパレードで華麗なる追いかけっこ。翔んでゆく先も映画的逸脱として正しい方角。作らなければもっとよかったという気もするが。 | [投票] |
★4 | どん底(1936/仏) | 『人情紙風船』がほぼ同時に作られている。ギャバンはワルで抜け目なく、しかしロマンチックでもある奴で、ジョン・レノンが『ワーキングクラス・ヒーロー』を唄う何十年も前に既にそれをやっている。結末で二人のゆく道は『大いなる幻影』に真っすぐ続く。 [review] | [投票(1)] |
★3 | みかへりの塔(1941/日) | ロケ地が魅力的(日あたりのいい斜面にある学園、門前を汽車が疾走する)でそれだけで楽しくなる。演出は最小限に抑え、サッと撮っていて活きがいい。そして役者にも観客にも媚びを売らない。水路建設の挿話だけは時代の風潮に迎合している感じがあって残念。 | [投票(1)] |
★3 | シン・仮面ライダー(2023/日) | 格好いいのは着ているコートだけという困ったヒーローもの。虫になってしまったヘンな人たちがなんだか舞い踊っている、という印象をうける。「シン」と題うつほど突き付けてくるものも感じない。トンネルの場面は目玉しか見えず、ハエの観察をしている気分。 | [投票(2)] |