コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 天空の城ラピュタ(1986/日)

「ラピュタはかつて天空にあり、全地上を支配した恐怖の帝国だったのだ。」「最高のショーだと思わんかね?」「見ろ!人がゴミのようだ!」これらの名台詞を残したジブリ史上最大の悪役であり、隠れファンも多いムスカ大佐。かくいう私も大佐に惚れ込んだ一人である。
牛乳瓶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







宮崎アニメの最高傑作とも呼ぶべき鑑賞後、心が温かくなる、人に優しくしたくなる、好きな人を命を懸けても守りたくなる。そんな映画です。

監督・脚本の宮崎駿氏の言うように、本作は少年向けの冒険映画に仕上がっているものの、大人でも女性でも楽しめる作りとなっている。また、演出も基本が詰まっている作品である。スピード感溢れる演出といい、全てのプロットを観客に真摯に説明する姿勢といい(またその説明がくどくない)、登場人物に感情移入させて、その後の展開を観客に想像させる「間」を作ったと思えば、人間が演じるよりも人間味溢れるキャラクターが随所に登場し、私たちを微笑ませてくれる。宮崎監督はキャラクター全てに命を込め、アニメとは思えないほどに人間らしい、そして私のように日常に揉まれてしまっている者から見て、憧れの姿がそこにある。

お気に入りのムスカに言及するなら、人の悪さや口にする台詞の面白さはジブリキャラクターの中では群を抜いているものの、飛行石を持たないと生え際のヤバイ、ただの弱い男だと考える。登場シーンからシータにやられるムスカ。ロボット兵が動き出すと、興奮して類まれなる面白台詞を独白するだけで、自分では何も出来ないムスカ。飛行石を手にした途端、生き生きし始め、出てくる言葉は暴言だらけ。今まで従っていたモウロ将軍に対しても、「君のアホづらには心底うんざりさせられる」と積年の恨みを込めて口にするムスカ。恐らく友達がおらず、ストレス発散の仕方も良く分からずに、悩みを抱え込む内向的な人間だったようです。恐らくシェイクスピアの『リチャード三世』と同じ理由で、ムスカ大佐は権力に固執する傾向があるものと思われます。

こんなムスカ大佐がまるで主人公の如き一人芝居を続けるものの、ラストでは涙、涙。ここまで終わらないでくれ!と思った作品は本作を置いて他にありません。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)紅麗[*] ina

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。