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[コメント] リアリズムの宿(2003/日)

行間に語られるコミュニケーションの状態。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 興味深かったのは、彼らが何処かへ向かって歩いているときの順番とスピードと距離だ。坪井が先導しながら後ろの木下に気を使って幾度か振り返ったり、ズンズン歩く敦子から3歩遅れて男2人が必死についていったり、敦子の正体を知った木下が半ばヤケクソなスピードで坪井を振り切るように坂を登っていったり。イベントの合間にあるそれら「歩く」シーンで、この映画はあてのない旅のイニシアティブが、その瞬間、誰にあるのかを明示してゆく。

 ともすれば男たちを取り巻くシチュエーション・ショート・コメディの羅列になり兼ねない(それでも山下のセンスは群を抜いて良いが)この手の映画を、行間で「コミュニケーションの状態」の変化を語ることで、背骨のキッチリ通ったひとつの作品に成り立たせていると感じた。実に見事な演出と思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ゑぎ[*] 煽尼采 けにろん[*]

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